「北欧型福祉国家」は崩壊に向かっているのか…フィンランドで起こっている、良質な医療・教育を脅かす驚きの政策
社会保障の歳入・歳出は計算通りとなるのか
上記は、今年に入ってすでに施行されたものと9月から施行されるものがある。 フィンランドの国民年金庁が、毎年支払う様々な手当は約160億ユーロ(2兆7千億円)である。それは、フィンランド人やフィンランド在住者の約80%が、住居手当や収入補助手当、医療費手当などとして受給している。 しかし、削減によって最も影響を受けるのは、現に失業手当や収入補助手当などを受けている層であり、すでに経済的に楽ではない人達の状況を悪化させてしまう。それは、社会保障の受給層を増加させ、かえって社会保障の歳出を増加させることになると批判されている。 それに対し、社会保障大臣のサンニ・グラーン=ラーソネンは就業を奨励して雇用を増やし、歳出を減らして労働市場を改革すると主張している。その試算によると7万4千の雇用を新たに創出し、17億ユーロ(2880億円)の歳入を得られるという。 さらに、公的医療サービスの縮小や教育予算削減も起きている。 ・公立病院での初診料、及び処方薬の自己負担額の値上げ。処方薬の自己負担額は、現在の50ユーロ(8,500円)から70ユーロ(11,900円)に引き上げられる。これは、ガンなどの病気の場合でも一律で、自己負担額を超えるとかなりの公的援助がある。 ・複数の公立病院で、夜10時から朝7時までの夜間緊急診療を廃止。病院1つがやめることによって500万ユーロ(8億5千万円)の経費節減できるという。しかし、これには地元の市民などから強い反対の声が上がり、撤回される可能性もあるようだ。 ・高齢者の24時間ケアに必要なケアワーカーの数を減らす。現在は、20人の高齢者に対し13人が必要だが、12人に削減される。 ・公的医療サービスを縮少しつつ、私立の医療を推奨。今年1月、私立医療機関で診療を受けた時の手当が、8ユーロ(1,360円)から30ユーロ(5,100円)に引き上げられた。公立の医療機関に比べて私立の料金はずっと高いが、手当を増やして誘導している。