東山に“らしさ”消されるも…。諦めずに攻めた静岡学園が後半ラストプレーで追いつき、守護神大活躍のPK戦で勝利!
[7.28 インターハイ2回戦 東山高 1-1(PK2-3)静岡学園高 JヴィレッジP2] 【写真】「いとこがSixTONESジェシー」驚きの告白をしたパリ五輪サッカー日本代表FW 静学が執念の勝利でベスト16入り――。令和6年度全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技(福島)2回戦が行われ、東山高(京都)と静岡学園高(静岡学園)が対戦。1-1で突入したPK戦の末、静岡学園が3-2で勝った。静岡学園は30日の3回戦で日章学園高(宮崎)と戦う。 70分間、ほぼ東山ペースと言えるような展開。静岡学園は相手のハイプレスに苦戦し、シュートゼロの時間が続いたが、最後まで諦めなかった。後半ラストプレーで“静学らしく”ドリブルから同点ゴール。そして、這い上がってきた守護神のPK戦での大活躍によって、3回戦への切符を勝ち取った。 東山は今年の近畿高校新人大会王者で、プリンスリーグ関西2部では開幕7連勝を飾るなど力のあるチームだ。1回戦は高川学園高(山口)に1-0で勝利。2回戦はGKが麻生太朗(1年)、DF沖村大也(3年)、上山泰智(2年)、津崎翔也(3年)、中山和奏(3年)、MF古川清一朗(3年、善積甲知(2年)、辻綸太郎主将(3年)、井上慧(3年)、FW 小西凌介(3年)、山下ハル(3年)の11名が先発した。 一方の静岡学園はプレミアリーグWESTで苦しい序盤戦も徐々に立て直して現在9位。今大会初戦では、プリンスリーグ関西1部で無敗首位の興國高(大阪1)に逆転勝ちしている。この2回戦は、怪我明けから間のない注目右SB野田裕人主将(3年)がコンディション面を考慮して欠場。GK野口晟斗(3年)、DF山内星之介(3年)、関戸海凪(3年)、岩田琉唯(3年)、望月就王(3年)、MF篠塚怜音(2年)、堀川隼(3年)、加藤佑基(3年)、池田双葉(3年)、天野太陽(3年)、FW大木悠羽(3年)の11人で強豪対決に臨んだ。 序盤から東山がプッシュ。縦に速い攻撃によって敵陣深い位置でスローインを獲得し、沖村が低弾道のロングスローをゴール前に入れる。開始4分間で2度のチャンスを作り出すと、その運動量、連動した守備で静岡学園のビルドアップを制限して見せる。 「中盤をとにかくもう圧縮して、(静岡学園の)やりたいことをやらせないである程度やってたのは良かったかなと思います」と福重良一監督。ビルドアップの起点である両サイドバックのところで“ハメられた”静岡学園は、自然とロングボールが増え、相手に渡してしまっていた。 良い入りをした東山にアクシデント。府予選決勝、全国大会1回戦でいずれも決勝点を決めているエースFW山下が前半25分に負傷し、MF野田凰心(2年)と交代した。だが、その1分後、攻守で存在感のある動きを見せていた沖村が右からPA中央へパスを差し込む。これを受けた井上が左への動きから対角の左足シュート。見事な一撃を決め、先制した。 リードした東山はベンチからの「下がるな!」の声に呼応してプレッシングを継続。ルーズボールの競り合いでも引かず、先にボールを触ろうとし、前線、中盤で奪い切れなかったボールは上山、津崎の両CBが素早く、的確なカバーリングで蹴り返す。静岡学園は前半終了間際に池田との連係で天野がポケットへ侵入。直後にも山内がラストパスへ持ち込んだが、シュートゼロで前半を終えた。 静岡学園の川口修監督は、「率直な感想は、自分たちのスタイルをちゃんと表現できなかった。ボールの受け方だったり、受けた後の判断だったり、そういうところが全然できなかった。相手のプレッシャーに呑まれた感じでした」と首を振る。後半も落ちない東山の運動量、プレッシングに苦戦。磨いてきたドリブルで局面を打開するシーンはわずかだった。 また、東山は沖村のロングスローと中山の左足CKによってあわやのシーンを作り出してくる。津崎や沖村がヘディングシュートを放つが、枠を捉えず、追加点を奪うことができない。静岡学園は後半7分にコンディションがベストではないエースFW大木をMF四海星南(2年)へスイッチ。12分には篠塚と望月に代え、いずれも突破力に秀でた左SB鵜澤浬(3年)と右SH原星也(3年)をピッチへ送り出した。 静岡学園はボランチの枚数を減らして攻めに出た一方、ベンチも失点を覚悟するようなピンチも。だが、関戸が際の攻防で足を出して食い止めるなど、思い切りよく前へ出るGK野口、岩田らとともに良く踏ん張っていた。25分、東山は古川のスルーパスから野田が抜け出し、折り返しから清水、小西がゴールを狙う。だが、静岡学園はDF、GK野口が身体を張ってブロックする。 そして、ボールを奪うと、1点を目指してDFラインやMF堀川からのビルドアップを徹底。東山は運動量を維持するためにDF尾根碧斗(2年)とFW林亮大朗(2年)をピッチへ送り出す。だが、静岡学園は35+2分にこぼれ球を加藤が右足で初シュートを放つと、35+5分にも左サイドで鵜澤、天野と繋いでゴール前へ。原、鵜澤がドリブルでボールを前進させるなど、可能性を広げていた。 そして、35+8分、左サイドでボールを持った鵜澤が相手2人をかわしてボールを繋ぐ。池田の左クロスはクリアされるも、右の原が1対1からドリブルで勝負。「今、ジョーカーですけどね。いい武器を持っている」と川口監督が評価する原のクロスを天野が頭でゴール左隅へ流し込んだ。 後半ラストプレーでの劇的な同点ゴール。東山はほぼ完璧な内容も、終了間際の一発で追いつかれた。福重監督は「セットプレーでやっぱ点取れなかったっていうのは、やっぱり向こうに元気づける要因というか、(追いつく)条件を与えてしまったところがあったかなと思います」。チャンスで2点目を決め切れなかったことを勝ち切れなかった要因に挙げていた。 迎えたPK戦では、両守護神がビッグセーブを連発する。1人目、静岡学園GK野口が後攻・東山のシュートを止める。東山の1年生GK麻生が3人目を止め返すが、直後に静岡学園GK野口が再びストップ。静岡学園は決めれば勝利の決まる5人目を麻生に止められるも、直後に野口が左への跳躍から三度止めて決着をつけた。6月までセカンドチームのゴールを守っていた3年生GK野口が躍動。静岡学園が3回戦進出を果たした。 “技巧派軍団”の静岡学園は“らしさ”をほとんど表現できなかったが、最後まで諦めずに戦い、ゴールをこじ開けた。天野は「(相手の)守備の圧力っていうのは結構キツくて。でも、思うように前に行けない時間が多かった中で、最後にみんなで攻めて、攻めて点を取れたっていうのは大きい収穫かなっていうのは思います」と前を向く。また、川口監督は内容について厳しく指摘した一方、「選手たちの諦めない気持ちだったり、最後まで、ベンチも含めて、みんなで行けるぞっていう気持ちが出た。そこらへんは凄い大事なんで。あそこで諦めちゃうチームと最後まで行くチームは全然違うと思うので、そういうところが凄く身に付いてきている」と讃えた。 3回戦へ向けて川口監督は、「静学のスタイルっていうのを出さないとダメなんで、ここに来た意味がないんで、それを次の試合で表現できるように準備したいと思います」。あくまでこだわるのは日々培ってきた個々のテクニックやアイディアを発揮すること。主将の野田が復帰予定で攻撃のクオリティ向上が期待される3回戦では、「静学スタイル」を表現し続けて勝つ。