【40代、50代は血糖値に要注意③】和菓子と洋菓子、血糖値が上がりにくいのはどっち? スイーツと血糖値の関係を専門医に聞いてみた
左のCがコブサラダ+いちご羊羹の日。14:00にランチのコブサラダと小さないちご羊羹(*4)を食べると、血糖値はぐーんと上昇。基準値(グリーンの範囲)を超えて180mg/dL近くなり、血糖値スパイクを起こした様子だ。 右のDがコブサラダ+シュークリーム。この日も14:00にコブサラダのランチ、そしてシュークリーム(*5)だ。血糖値はやや上がったが、いちご羊羹に比べるとピークは低く、基準値内で収まっている。 *4:とらやの小形羊羹「いちご」の炭水化物(糖質+繊維質):33g。 *5:シュークリームの推定糖質:20g。
左のEが豆大福を食べたときのもの。18:20に豆大福(*6)を食べると、いきなり急上昇してしまった。お腹が空いて血糖値が下がっている時間帯だったことも影響していそうだ。 右のFがショートケーキ(*7)を食べたときのグラフ。15:00のおやつに食べている。じわじわ血糖値が上がったり下がったりを繰り返してはいるが、急激な上昇には至らなかった。 *6:豆大福の推定糖質は30.7g。 *7:いちごのショートケーキの炭水化物(糖質+繊維質)は23.6g。
血糖値上昇という観点で見ると、洋菓子のほうがベター
3人の結果を見ると、どちらも血糖値が上がっているが、和菓子のほうが急上昇しやすい傾向があるようだ。 「糖質は栄養素の中で唯一血糖値を上昇させる栄養素ですが、お菓子に含まれる糖質量は多いですからね。どちらもある程度は上がります。バターやクリームが使われている洋菓子のほうが一般的にトータルカロリーは高いのですが、糖質で見るとどうでしょうか? 和菓子は米粉(餅やぎゅうひ)が主原料だったり、小豆を砂糖で煮たあんこがメインだったり、小麦粉を使ったお菓子もあるので、合わせ技でトータルの糖質量はかなり多くなります」 現在、糖質量を抑えた低糖質のお菓子もたくさん出ている。和菓子と洋菓子、同じ糖質量だった場合はどうなるのだろうか? 「いいところに気づきました! もし同じ糖質量だったとしても、洋菓子のほうが血糖値が上がりにくいんですよ。なぜって、バターや生クリームなどの脂質が含まれているから。 脂質と一緒に食べることによって、糖の消化と吸収が遅くなり血糖値の上昇は緩やかになります。上がり方がゆっくりだから、血糖値を下げるインスリンの放出がゆっくりでも血糖値のピークが低くなるし、スムーズに血糖値が下がってくれます。 逆に、和菓子はあまり油分を含まないので、ダイレクトに糖質が血糖値に影響を与えます。 とは言え、油脂が血糖値の急上昇を防ぐと言うと、ポテトチップスなど油で揚げたお菓子もいいんだと思ってしまう人がいますが、いもは糖質が高いので気をつけてくださいね。また、しょっぱいせんべいや辛い柿の種ならいいでしょうという人もいますが、さにあらず。せんべいはお米ですからね、そのまんま糖質ですよ」 なるほど。血糖値を急上昇させたくないけれど、ちょっと甘いものが食べたいな~という場合は、低糖質の洋菓子なら理想だ。 ところで、スイーツといえば砂糖だが、砂糖の種類も気にしたほうがいいのだろうか? 「黒糖、三温糖、てんさい糖など砂糖の種類は、血糖値の上がり方とあまり関係がありません。大きい分類で言うとどれもショ糖なので、糖は糖。量が多ければ多いほど血糖値を上げます。 栄養面からすると、精製されていない糖のほうがいいかもしれませんが、玄米、白米の比較と同じで、どちらも糖質の量だけ血糖値を上げますよ」 朝食でとる人も多いフルーツはどうだろうか? 「フルーツの糖質は、果糖(フルクトース)と呼ばれる糖類です。皆さんが装着した『リブレ』で測っているのはブドウ糖(グルコース)だけなので、実は直接果糖を測ることができません。 フルーツを食べると果糖は肝臓で代謝され、一部が腸内細菌の力でブドウ糖に転換されます。血液中に出てくるのはその後なので、血糖値の急上昇にはなりにくいと思いますね。ただ、ドライフルーツは干すことによって糖分が凝縮されていますから注意が必要です。 以前お話した通り、40代以降は血糖値を下げるインスリンを出すすい臓の働きが少しずつ落ちてきます。血糖値を急激に上げるスイーツやおやつの食べすぎには注意してくださいね」 結論。和菓子と洋菓子では、和菓子のほうが血糖値の急上昇を招きやすい。健康診断で血糖値が高めと言われた人、血糖値スパイクが気になる人は、血糖値の上昇をなるべく緩やかにしてくれるおやつをを選ぼう。 ※血糖値の変動には個人差があり、モニターの結果はあくまで一例です。同じ食材をとっても人によって、また食べるタイミング等によって変化します。 ※食べ物の糖質量は推定量です。
【教えてくれたのは】 山村 聡さん 糖尿病内科医。九州大学医学部卒業。東京ミッドタウンクリニックで診療するかたわら、糖尿病啓発・予防のため血糖値に関するSNS発信を行っている。豊富な診療経験をもとに、一人一人のライフスタイルに合わせた血糖値改善、ダイエットプログラムの開発にかかわるなど予防と医療の架け橋として活動中。自らの体を実験台にしてさまざまな食材の血糖値を測定するYouTubeチャンネル「やさしい内科医のY's TV」が人気。登録者数は7万人超。 取材・原文/蓮見則子