2024年の選挙が示した政治不信とネット選挙の可能性
❝まずは、政治資金問題などをめぐり、国民の政治不信を招いた事態について、深い反省とともに触れねばなりません❞ 9月に行われた自民党総裁選で5度目の挑戦にして当選した石破茂氏。総理大臣として初めて臨んだ国会での所信表明演説はお詫びの言葉からスタートしました。このお詫びの5日後には大方の予想よりも早いタイミングで「信を問う」(10月9日の総理会見)として解散総選挙に踏み切りました。 そして、10月27日に投開票された第50回衆議院議員選挙では、15年ぶりの与党過半数割れ。議席を伸ばした野党第一党の立憲民主党も目標としていた政権交代には届きませんでした。この一方で躍進したのが、結党から10年にも満たない国民民主党やれいわ新選組、参政党、日本保守党でした。「信を問う」はずだった衆院選の投票率53.85%で、戦後3番目の低さでした。 衆院選の結果全体に象徴されるように、今年の選挙を語る上で欠かせないキーワードは「政治不信」です。 また、地方行政の現場でも首長による「ハラスメント問題」によって現職が辞任・失職して選挙に至ったケースが5件(静岡県知事選挙、兵庫県知事選挙、岐南町長選挙、池田町長選挙、東郷町長選挙/選挙ドットコム調べ)あり、全国的にもニュースになりました。 国でも地方でも政治に対する不信が渦巻く1年となりました。
3つの選挙を経て「ネット選挙」は新たなステージへ
今年の選挙でもう一つの特徴が、YouTubeを活用した政党や候補者の台頭です。 インターネット上での選挙運動を認める「ネット選挙」が解禁されてから約11年経ちましたが、これまでは街頭・個人演説やチラシ配布などのいわゆる「地上戦」が主流でした。 しかし、この雰囲気を顕著に変えたのが、東京都知事選挙(7月7日投開票)での石丸伸二氏、第50回衆議院議員総選挙(10月27日投開票)での国民民主党、兵庫県知事選挙(11月17日投開票)での立花孝志氏によるSNSを駆使したネット選挙戦略でした。 3者に共通していたのが、SNS(特にYouTube)を継続的・双方向的・戦略的に活用したことで、自身(立花氏の場合は自身が推す他の候補)に投票させるまで有権者のモチベーションを搔き立てた点です。 選挙の前からYouTubeで発信し続けていたことで、選挙時点にはすでに「ストックコンテンツ」がある状態に。そして、検索した人にどんどん関連コンテンツが表示されるようになりました。 さらに、ライブ配信などで視聴者からの質問に答え、「地上戦」も並行して進めるなど、有権者にダイレクトにかつ即時に応答することで支持を広げていきました。