カスハラ対策に「ビジネスネーム」導入の動き ネット社会で情報漏れる実名勤務はリスクに
プライバシー保護やカスハラ対策として、主に接客業で「ビジネスネーム」を導入する動きが広がっている。プライバシーの開示は働く人にとって大きなストレスとなっており、働きやすさや働きがいの向上にもつながっているようだ。AERA 2025年1月13日号より。 【写真】レジカウンター内に貼られたカスハラ行為のポスターはこちら * * * 京王電鉄バスグループでは2024年4月から、バス車内に掲示する乗務員名について、本名とは別の仕事用の名前「ビジネスネーム」を用いることができる制度を導入した。これまで掲示してきた本名をそのまま使用するか、乗務員自身が考案したビジネスネームを掲示するか選択できるという。同社はそれぞれの名前について「ビジネスネームなのか、本名なのか」を公表していないが、SNS上には複数のビジネスネームとおぼしき名前の目撃情報がある。 ■氏名掲示義務の廃止 23年8月に道路運送法施行規則が改正され、かつて義務付けられていたバス車内での乗務員の氏名掲示が不要となったことを受けて制度の導入を決めた。「乗務員のプライバシーの確保とグループに愛着を持っていただくことを両立する」ためだという。制度改正によって乗務員の氏名掲示を取りやめたバス会社は多いが、ビジネスネームを導入した例は珍しい。 同社管理部総務担当課長の渡邉大輔さんは言う。 「氏名掲示義務が廃止されたことで、今後の取り扱いについて乗務員からの問い合わせはありました。一方、アンケートはがきなどでは乗務員を特定したお褒めの言葉をいただくことも多く、乗務員の励みにつながっています。今後もお客様の乗務員に対する親しみを大切にしていきたいと考え、氏名掲示の廃止ではなく『ビジネスネーム』を採用しました」 ■プライバシーへの配慮 ビジネスネームの歴史は古く、江戸時代まではライフステージに応じて名を変えるのは普通のことだったし、職に応じた名を名乗るケースも多かった。現代でも芸能界の芸名などビジネスネームがごく一般的に使われる業種もある。 一方、多くの職場ではこれまで、本名で仕事をすることが一般的だった。結婚など家族関係の変化で氏が変わった場合に旧姓使用を認めるケースはあったが、全く別の名前の使用が認められる例は珍しかった。