鉄道とともに発展したまち・奈良王寺町 苦境乗り越え着実に歩む 昭和100年 まちの今昔
さらに57年には台風10号の影響で大和川大水害が起こり、駅周辺など市街地のほとんどが浸水した。被災した岡嶋さんは「店は床上浸水で、プロパンガスも流され、機械もすべてだめになった」と振り返る。当時、53年に橋上に建て替えられたばかりの王寺駅舎に避難する人が多かった。そうした中、他府県の同業者らが助けてくれたという。岡嶋さんは「トラックでパンを運んできてくれて、被災した周辺の人たちに配ったりしてくれた」と話す。
■大きく様変わり
それから時はたち、平成を経て令和となった。大型商業施設も整備され、町は大きく様変わりした。同町で50年以上時計店を営んでいる中川政明さん(76)は、「昭和のころの雑多な感じがなくなったが、活気も減った気がする」とつぶやく。
それでも、「鉄道のまち」としての人々の矜持は今も変わらない。町内には明治時代の鉄道遺構が貴重な観光資源として残され、毎年秋に行われる町観光協会主催のイベント「鉄道イベント」には全国の鉄道ファンが詰めかける。
令和8年には町制施行100年を迎え、町はさらに「鉄道のまち」を町内外に発信していく構えだ。町の文化財学芸員の岡島永昌さんは「普段何げなく通っているところにも、鉄道のまちの歴史があることを誇りに思ってほしい」と話している。(木村郁子)