「つみたてNISA」の取り組み姿勢で決まる? 今後生き残る金融機関
今年から始まった「つみたてNISA」の1月末時点での主要証券・銀行における口座数は約38万に達した。また昨年から制度拡充された個人型確定拠出年金「iDeCo」や既存のNISAによる積立契約もあわせると、それらすべての口座数は150万を超えており、現役世代の資産形成を後押ししているとの報道もある。 とはいえ、「つみたてNISA」を取り扱う販売金融機関の取り組み姿勢は、全体として必ずしも積極的だとは言えない。なぜならば、投資信託を販売する証券・銀行などの金融機関にとっても、販売会社の都合にあわせて商品を供給し続けてきた投信会社にとっても、これまでの業界のビジネスモデルに相反する制度設計となっているからだ。 一方で「つみたてNISA」を主管する金融庁は、同制度の普及に大変意欲的で、業界の及び腰に厳しい監視の目を光らせる。金融庁はなぜ、あえて業界慣習に馴染まぬ制度設計へ踏み込んだ上で、その浸透にこだわるのか。
なぜ、いま日本の投資信託改革なのか?
森信親金融庁長官の強烈なリーダーシップに裏打ちされた金融改革は、「地域経済に根差した間接金融の社会的使命に鑑みた地方金融機関の原点回帰を意図した銀行改革」と「直接金融の抜本的な機能拡大を目指す資本市場改革」の二本柱で、日本の金融業界は自ら事業モデルの大転換を迫られている。「つみたてNISA」は資本市場を通じた成長マネーの創造する投資信託の社会的存在意義に問いかける投信改革の仕上げともいえる、象徴的な制度として位置付けられている。 そもそもなぜ、いま日本の投資信託改革が焦眉の急なのか? 金融改革のメインフレームは、ゼロ金利で一切の富を生まない1千兆円におよぶ生活者の預貯金の再稼働だ。すなわち 1千兆円を新たな富を生む原資に換えるための金融構造改革である。生活者が預貯金を自らの意志で資本市場を通じて成長マネーにシフトしていく手段として、投資信託を活用するのが最も合理的手段だと考えられる。「貯蓄から資産形成へ」というスローガンにかなう日本の投資信託のあり方が、いま問われているのだ。そして改革が促されているという事実は、投信業界がそうした機能を果たしていないという金融庁によるアンチテーゼの意思表示と受け止めるべきであろう。