「学校に行ったら殺される」壮絶ないじめの恐怖でひきこもりに…実母と義父の虐待から、高校生でギャンブル依存症になった男性(48)の地獄の日々
大金を手にしてギャンブルに
再び無職になったが、もう親には頼れない。生活費を稼ぐためフリーランスのSEとして働いた。 「とにかく朝、起きれないんですよ。病気が治ってないから当然ですけど、遅刻がすごく多くなって、クビになる。でも、長期的に休むことは経済的にできなかったから、ちょっと働いてお金を貯めては休んでのくり返し。そんな生活を3年くらいやって、もう働けないなと思って障害厚生年金を申請したんです。そうしたら、5年分の遡及請求が認められて、330万円くらい一気に入ってきたんですよ」 思わぬ大金を手にしたなおさんが向かったのは、海外のカジノ。スロットなどであっという間に全額使ってしまう。それでもやめられず、数百万円の借金まで作ってしまった。 「診断されたのは少し先なので、当時はまだ双極性障害(気分が高まる“そう”状態と落ち込む“うつ”状態をくり返す病気)という自覚はなかったんですが、あとでふり返ると、明らかに“躁(そう)転”していました。 しかもギャンブル依存症だったんだと思います。高校生のときからパチスロをやり始めて、それが年々加速して、もうギャンブルやってないと落ち着かない状態でしたから。 負けた瞬間はドンと落ち込むんだけど、明日は勝てるだろうと思う。依存症や双極の人って、そういう傾向があるみたいですね。気づいたら、取り返しがつかないところまでいっちゃったんです。 もう無理かもと思ったときに、これでダメなら樹海に行こうと決めたんです。家には首吊る場所がなかったし、飛び降りは迷惑がかかる。樹海に行ったら誰にも気づかれずに、それこそ死ぬっていうより、消えることができるだろうって」 2010年11月、当時34歳だったなおさんは、大量の睡眠薬と酒を持って、富士山のふもとに広がる樹海に向かった。何時間も歩いて奥のほうまで分け入り、焼酎を飲み始める。 そこで起きた奇跡のような出来事が、なおさんをこの世に引き戻すことになる――。 取材・文/萩原絹代
萩原絹代
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