青木真也がDDT最高峰のベルトを欲する理由。「もっとギクシャクしていいと思うんです」【週刊プロレス】
7・21両国国技館のメインでMAOを退けKO-D無差別級王座防衛を果たした王者・上野勇希から、その場で次期挑戦者の指名を受けた青木真也。総合格闘技と並行する形でDDTのリングに上がり続けてきたが、今回が4度目のチャレンジとなる。今、プロレスのリングで青木を突き動かしているものはなんなのか、直撃した(聞き手・鈴木健.txt) 【写真集】2年前、青木真也が大相撲出身の王者に挑んだ異色のタイトルマッチはこちら
上野なら恥をかいてもそれを転がすと信じているからやる
――青木選手は過去に3度、KO-D無差別級王座に挑戦しておりますが、DDTのリングに上がる中で無差別級ベルトの位置づけはどういったものになっているのでしょうか。 青木 まったく無視しているわけではなく、獲れるんだったら挑戦したいベルトですけど、いかんせん僕は所属じゃないから、外様としてなかなかチャンスが回ってこないのも構造的に理解していますから。まあ、視界には入っているけれども僕が挑戦するのはあんまりなかったですよね。 ――3回中2回はいつでもどこでも挑戦権を持っていたから実現した形で、自身から動くことはなかったですよね。 青木 なかったです。また、竹下にも樋口にもしっかり負けていますし。ただ期待や希望は持ち続けてまいりました。 ――シンプルに“ほしい物”ですか。 青木 ほしいかいらないかで言ったらほしいです。ただ、今の上野が持っているベルトに価値があるかはわからない。今、中で回っているベルトじゃないですか。すごくドメスティックなベルトだと思っているから、その意味では価値があるかはわからない。 ――それでもほしいと思えるのは、どこに価値を見いだしているのでしょう。 青木 一つ、価値を上げられる。価値を上げることができる。僕だったらできる。あとは、これを使ってやりたいことがいくつかあって。 ――自分の中に温めていたものがあると。 青木 自分自身というか、やっぱり…みんなが中嶋(勝彦)-遠藤にフタをしているじゃないですか。誰も触れない。それは会社の意向なのかもしれないし、自分たちが目指す主義主張に反するのかもしれないけど、僕はやり返さなきゃいけないと思っているから、闘いである以上は。プロレスが闘い、競い合いであるっていうことであれば僕は無視しちゃいけないと思うんですよね。上野ですら遠藤本人ですら、秋山準ですらフタをしている。その実情を見て、俺だったらフタをしないことができるからという気持ちがあります。 ――GLEAT7・1TDCホール大会で、鈴木裕之社長に中嶋選手との一騎打ちを要求していましたが、根底にその思いがあったからだったんですか。 青木 それがあったからというよりも、GLEATの世界線だと今頂点である中嶋勝彦とやりたいというのは心情として当然だと思うんです。ただ、DDTのベルトを獲ることによって、よりやる理由がつきますよね。逃がさない理由ができる。 ――DDTの最高峰という意味で獲りたい意識はあるのでしょうか。 青木 もちろん。僕が頂点に立つと活性化できると思います。それによって黙っていられないと思う人も出てくるだろうし、こういうことやっていいんだってみんなも思うだろうし。ぬるま湯というか、温かい心地よい環境を壊すからこそ元気になるんじゃないですかね。 ――青木選手の中でDDTをこうしたいという意志があるんですね。 青木 はい。僕はもっとすごくいいリングだと思うんですよ。もっとギクシャクしていい。 ――確かに観客も含めて心地いい場所としては確立されています。 青木 そう、心地いいんですよ、メチャクチャ。そこは否定しないです。ただ、おまえたちがやっていく中でそこだけでいいのかという気持ちがあります。 ――今回は、上野選手の指名を受けて挑戦するわけですが、いつか来ると予測していましたか。 青木 やりたいんだろうなという気持ちはすごく感じていました。でもそれは上野だけじゃなく全員がそう感じていると思うんで。なぜかというと、僕がよくも悪くもプロレスが下手だから、ギクシャクするかなじまないか自分だったらどういう試合になるんだろうと思って、やりたがる人がいるんだと思います。 ――ただ上野選手の場合は、青木選手に対する思い入れを何度となく言葉にしてきました。そこは他の選手と距離感が違うのでは? 青木 上野勇希に「なりたい」という気持ちが強いんだと思います。上野勇希は上野勇希になりたい、上野勇希を作りたいという意識が感じられるので、俺だったら引き出してあげられる自信があります。おまえのやりたいことをやらせてやるよ、そして恥かかせてやるよ。 ――影響を受けた対象だからこそ、どこかでそれを超えなければ呪縛に囚われて先に進めないと思っているようにも見えます。 青木 それなら恥をかかないと。何かのきっかけがなければ、恥さえもかけなくなると思いますよ。 ――立場的に恥をかけないという現状もあるでしょう。それでも…と。 青木 僕は上野を信用していて、恥をかいてもそれを転がし、こやしにして自分の物語に踏み込めると思います。 ――この一戦はどちらかというと上野選手の物語ですが、青木選手の中にはなんらかの物語はあるんでしょうか。 青木 物語は、獲ってからじゃないですか。俺はこれ(ベルト)が必要だし、また一つの集大成としてやり甲斐を感じています。 ――シングルのタイトルとしてはDDT EXTREME王座を2度戴冠していますが、位置づけは違ってきますよね。 青木 懸けている気持ちから違います。 ――上野選手に対し「存在を懸けてこい」と言っていましたが、今までその姿勢は見えていなかったのですか。 青木 まったくないです、まったくないです。まったくないし、本当にプッシュされた時には変えられないと思います。プロモーションに耐えられない。ハリボテ。ただ、今そうであることを晒して、あいつは強くなったり転がしたりすることができると思っているから安心して潰しにいく。 ――青木選手は誰もかれも潰しにいっているわけではないですよね。しかるべき相手にしかやらない。 青木 だって、死んじゃうもん。現に遠藤は死んじゃったでしょ、存在という意味で。それでも晒していく必要があるんだけど。でもあいつは大丈夫。すごく信頼しています。 ――その点に関しての上野勇希という人間の強さは感じていると。 青木 感じています。信用しているし信頼している。そもそもが、存在を懸けるとか自分がやりたいことをやるというのをちゃんとわかっている人だから。多くの人はわかっていないからお客さんと歩調を合わせようとする。それを彼は、自分が描くものがあるというのをわかっていますよね。
【関連記事】
- 世界初DDT新幹線プロレスの写真が第43回日本雑誌写真記者会賞「特別賞」受賞の快挙【週刊プロレス】
- DDT両国初進出を彷彿…さいたまで飯伏幸太がHARASHIMA破りKO-D奪還【週刊プロレス昔話】
- クリス・ブルックスがエル・デスペラードを正式にDDTへ招待する「待たせた時間よりも長く語り継がれるものにしたい」【週刊プロレス】
- ただの我がままなのに、本気でつきあってくれる人がいることの幸せ。エル・デスペラードがクリス・ブルックスに感じた「時間は有限」というエネルギー【週刊プロレス】
- ジュリアが爆弾発言!アイスリボン・藤本つかさに対戦要求、日本最終戦8・25新木場に向け「1分でもいい、リング上で語り合うチャンスをください!」【週刊プロレス】