「教えてもらって当たり前」「チヤホヤされて勘違い」そんな新入社員を潰さない方法
新入社員の意識や行動傾向とその背景とは
次に、組織をあげて新入社員の育成・定着に取り組んでいく効果を高めていくためにも、新入社員の世代が持つ意識や行動傾向とその背景について解説します。 ■新入社員の世代ならではの社会背景 個人差はありますが、まず前提として中学生や高校生のときにはスマートフォンを手に入れ、オンラインやSNS上でコミュニケーションを取ることが当たり前になっています。そんななか、人間関係の構築の仕方に独特の傾向が見られます。 ●過剰忖度 空気を読みすぎて、悪目立ちしたくないという心理を持っています。 ニュースなどで「炎上」という言葉を聞いたことがあると思いますが、一度炎上してしまえば、投稿を削除したところですでに投稿は拡散されていて、ネット上に半永久的に晒され続けます。これによって、自身が誰にどう見られているかわからないといった恐怖を感じているのです。 ほかにも、投稿に対しての「いいね」機能ですが、自分も「いいね」を押してもらえるようにとりあえず「いいね」を押さなければならないといった過剰忖度傾向も見られます。 ●相対的自意識 他人に自分を認めてもらうことで自身の存在価値を確認するという傾向です。 誰しも自分をよく見られたい、認めてほしいといった承認欲求はあるものですが、SNSのように24時間365日他人とつながり続ける環境のなかではそういった自意識が膨らむようです。そんななかで周囲からの評価は怖いが、自分を見てほしいといった葛藤が生まれています。 ●SNSでつながるヨコ社会(村社会) 個人と個人が直接つながり、仲間関係が横に広がっています。そしてSNSではご存じのとおり、会ったこともない人と簡単につながることができます。そして、そのつながりに仲間意識も持っています。 そんな世界で生きてきている若者からすると、会社組織のタテ社会に対して違和感を覚えてしまうようです。 上下関係や上司部下の関係を理解していないということではなく、上司にはお互いに協力し合える仲間として接してほしいと願っている。たとえば、どうしていいか分からないでいる部下に対し、「自分で考えろ」とか「いちいち聞いてくるな」という上司は仲間ではないと見なしてしまうようです。 ●意味づけ 「それってやる意味あるんですか?」若者をマネジメントする立場にある人ならば、一度は聞いたことがあると思います。新入社員は意味付けを大切にする傾向があります。 自分たちの仕事がどのようなもので、それがお客様にどのように貢献しているか、先々のあなたのキャリアのこの部分につながるのか、といった部分を伝えてやっと腹に落ちるのです。 かつては「つべこべいわずにやりなさい!」といった指示命令に対して理不尽さは感じても、それが当たり前だと思って従うという関係が通用していました。やればそれなりのリターン(報酬、成功体験、出世など)が見込めたからです。 しかし、今のような先が見通せない時代では、従ったところでそれに見合うリターンが得られるとは限りません。だからこそ「やる意味」を求める傾向があるのです。 ●時間価値 時間を奪われることにストレスを感じる傾向があります。一例として、分からないことがあると考えなしに何かとすぐネット検索する、マニュアルを概要だけ見て分かったつもりになるということがあります。 自分であれこれ考えて時間が過ぎていくよりもさっさとネットの中にある答えにたどり着いた方がいいという考え方です。 ある意味では生産性を重視しているともいえますが、何に時間をかけるべきで、何は効率化すべきかという判断基準が確立されないまま時間価値重視の傾向だけが一人歩きすると、仕事のパフォーマンスがいつまでも上がらないという本末転倒の状態を招く可能性もあります。 以上のように、新入社員の世代はヨコにつながる仲間コミュニティを基盤に、「バリバリ目立つのは嫌だけど、認められたい」という葛藤を抱え、「意味や目的の分からない無駄な仕事はしたくない」といったこだわりを持っています。また、現代社会のような先の見えない時代も相まって、キャリアについての考え方にも一定の傾向が見られます。 上の図のような心理状態や傾向を踏まえ、どのように育成(OJT)をしていくかが重要になります。