「打つ手なし」から賠償額84億円!ただの個人投資家が起こした「異例の訴訟」…大逆転の一手となった「決定的証拠」《ユニバーサルエンターテインメント社・株主代表訴訟》
原告側の真摯で切実な思いとは裏腹に、ユニバ社は一審判決に勝訴したことで、完全に浮き足立っていた。驚くべきことに、原告だけではなく裁判所に対しても舐めきった態度を見せていたのだ。 【マンガ】「長者番付1位」になった「会社員」の「スゴすぎる投資術」の全容 前編『請求額は70億円...! 「たった一人の個人投資家」が大企業相手に”異例の訴訟”を起こした「驚愕の理由」《ユニバ社・株主代表訴訟》』よりつづく…
逆転判決の決め手となった「幻の議事録」
三次訴訟での高裁逆転判決の要素は大きく2つあると思っている。 ひとつは、一審で勝訴したことからくる会社と会社側弁護団の緩み。もうひとつは、勝部弁護士が指摘した証拠が決定的なものとなったことだろう。実は、第三次訴訟の途中で、元ユニバ社から重要な証人と証拠が出てきたのだ。 三次訴訟の要は、富士本社長が日本円にして約67億円の不正送金を行ったというもの。会社側代理人は、「富士本氏の送金は取締役会の議決を経て行われたもの」と、主張していた。証拠として提出された取締議事録には、取締役の名前が記載され印鑑が押されていた。 しかし、その後に「幻の議事録」と呼ばれる、もう一通の議事録が出てきたのだ。同日付けで名称こそ異なるが、明らかに送金を否決するものだった。こちらは、名前のみで印鑑は押されていなかった。 つまり、後から出てきたものが「本物」で、最初に提出されたのは「作られた議事録」だったのではないかという疑念が持ち上がった。 それを決定づけたのが、議事録作成に関与していた元社員からの「証言」だった。そのため、高裁で証人尋問が行われるという異例の事態まで起こる。裁判所がいかにこの事実をいかに重くみていたか、ということになる。 実際、原告側に対して、この議事録を作成する過程におけるメールや裏付けの証拠を提出するよう早い段階から「宿題」を出していたが、その宿題が提出されることはついぞなかった。
「自分たちの勝利」を疑わぬ、会社側の驕り
迎えた最終審理の日……東京高裁の法廷は裁判官と原告側が不愉快さを感じることなど全く気にしていないかのように、会社側に座る弁護士らの笑い声が響いていた。 「自分たちの勝利」を微塵も疑っていなかったのだろう。不愉快なことは、それだけではなかった。いつまで経っても裁判が始まらないのだ。前の予定を切り上げて法廷に駆けつけた私は、目の前に座っていた人に不機嫌な口調で質問した。 「被告側の弁護士が来ないんですよ……」 と、困惑を隠せない表情で彼は答えた。書記官がK弁護士に電話をかけると、暢気なことに自宅にいたのだ。 「時間を間違えていた。20分ほどで到着する」 と慌てて、書記官に伝えているのは、傍聴人席にいる私のところにも聞こえるほどだった。結局、一度、裁判長らは控え室に引っ込み、遅刻弁護士が到着次第の再開となった。私は怒りのあまり、目の前の柵を蹴りそうになるのを堪えた。 約20分後……遅刻弁護士は、悪びれもせず、笑みを浮かべて現れ、被告席に座った。被告代理人同士の間からは、 「まったくもう、ドンマイ」 といった微笑ましい様子が伝わってきた。目の前の裁判官は苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべていた。
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