週10時間以上労働で雇用保険加入へ 要件緩和で500万人加入…私たちのメリット・デメリットは? 専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。11月23日(木・祝)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『雇用保険の加入要件の緩和』について」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
◆雇用保険の加入要件が緩和
政府が、雇用保険の加入要件である週の労働時間を、現行の「20時間以上」から「10時間以上」に緩和する方向で検討していることが分かりました。2024年の通常国会で関連法案を提出し、28年度にも実施する予定です。 厚生労働省が年内に開く労働政策審議会の部会で案を示す見通しで、政府の「次元の異なる少子化対策」の一環となりそうです。そこで今朝は、「雇用保険の加入要件の緩和」について塚越さんに解説いただきます。 ユージ:塚越さん、まず雇用保険について教えてください。 塚越:雇用保険は政府が運営する公的保険で、労働者の生活保障と雇用安定を図る目的があります。代表的なものの1つが失業等給付で、失業者が新しい職を探す間の生活費として、基本手当で離職前の賃金の45~80%を給付するものです。賃金が低い人ほど給付の割合が高くなります。財源は主に労働者と企業が負担する保険料、そして国庫からの拠出です。 雇用保険には他にも、0歳~2歳の子どもを育てるための「育児休業中」に賃金を補償する育休手当(育児休業給付金)と、解雇せず雇用を維持した企業に対する「雇用調整助成金」などがあります。 また、失業給付のなかでも、再就職手当や高齢者の就業を支援する「高年齢雇用継続給付」といった、失業時の収入補填以外の要素もあります。
◆新たに500万人が加入する見込み 不足した財源を補えるか
吉田:雇用保険の加入要件の緩和、政府の狙いは何でしょうか? 塚越:雇用保険加入要件は現在、週20時間以上働くことと、31日以上つまり1ヵ月以上の雇用見込みがある人が対象になります。今回は、その労働時間を10時間以上に緩和するものです。 これによって、アルバイトやパート従業員も支援措置を受給できるようになり、共働き世代や短時間労働者など、新たにおよそ500万人が加入する見込みです。現在の雇用保険加入者はおよそ4,500万人なので、そこに500万人、つまり1割以上増える計算になります。 ユージ:気になるところが、雇用保険の財源はどうしていくのでしょうか? 塚越:先ほども述べたように、財源は労働者と企業が負担する保険料と国費です。現在の比率は企業側が賃金の0.95%で、労働者が0.6%です。費用の一部は国費負担です。失業というのは、国の経済対策や雇用政策と関連が深いため、政府も責任を担うべきだということで(労働者、企業、国の)三者が負担するという考えです。 失業等給付は、不況に備えた積立金があり、2015年度には過去最高の6兆4,260億円まで積み上がっていました。しかし、コロナの感染拡大によって、雇用調整金として巨額の支給が必要となり財源が不足しています。そこで、失業等給付の積立金から累計3兆円以上を貸し出したため、2022年度には見込額で積立金は8,540億円まで減っているとのことです。 また財源不足のため、厚生労働省は去年の4月と10月、そして今年4月にも保険料率を引き上げている状態です。すでに育休関連の給付が増えており、本来の失業向けの比率が低下する恐れもあります。