老朽化で解体も……全国に存在する巨大観音像 建立の理由と管理の難しさ
それを裏づけるように、観音像を運営する宗教法人ではその周辺に墓苑などを開発し、販売する事例が増えだしている。販売収入を観音像の維持費に充てているという。 メンテナンスを定期的に実施しているところは、所有者の経済的な負担が小さくない。塗装や構造体の検査など、1回の工事で費用が1億円を超えるケースもある。当然、メンテナンスを怠ると老朽化していく。 保守・点検を怠らず、1961年の建立から安定的に維持されてきたところもある。千葉県富津市の「東京湾観音」だ。同観音を所有する宗教法人は墓苑などを経営しておらず、葬儀や法事でお布施を受け取ることもない。それでも多額のメンテナンス費を負担して維持してきたという。
1億5000万円のメンテナンス費用
JR内房線の佐貫町駅から徒歩でおよそ30分。南房総国定公園の大坪山を登っていくと、巨大な白い東京湾観音が姿を現す。 高さ56メートル。80年代以降に建てられた観音像ほど高くないが、足元から見上げると圧倒される。61年前に建ったとは思えないほど、その外観は端麗だ。 内部は中央に鉄筋コンクリートの太い丸柱があり、20階層になっている。参拝者は324段の螺旋階段を昇って観音像の頭部まであがることができる。毎年、初日の出などは参拝者で賑わうという。
「拝観料は1970年代からずっと500円のままです。コロナ前は参拝者が年間6万人でしたが、現在は4万人ほどに減っています」 支配人の藤平佐市郎氏はそう語る。参拝者が絶えない理由の一つに、観音像の定期的なメンテナンスがあるのではないかと言う。 「改修工事は大小合わせて過去に6回、約10年に一度の間隔で実施しています。鉄筋コンクリート造の建物は、雨漏りなどで内部の鉄筋が錆びると危険です。外壁の亀裂を防ぐために塗装工事を繰り返してきました」 マンションの大規模な外装工事は12~16年周期が目安となっているが、東京湾観音ではそれ以上の頻度でメンテナンスを行ってきた。直近では2018年に「平成最後の大改修」を実施。半年以上の工期をかけ、コンクリートのひび割れや欠損を補修し、外装もくまなく塗装しなおした。費用は約1億5000万円だったという。