老朽化で解体も……全国に存在する巨大観音像 建立の理由と管理の難しさ
経営不振や倒産が相次ぐ
北海道芦別市の「北海道大観音」(高さ88メートル)も1989年にレジャー施設「北の京・芦別」内に建立された。20階建ての内部には仏教美術館などがあり、総工費は約30億円だったという。
「北の京・芦別」も観光スポットだったが、90年代半ばから経営不振に陥り、2008年に運営会社は特別清算を申請。福島県の企業が土地と建物を所有して営業は継続されたが、12年には奈良県の企業が買収し、スポーツの合宿や教育研修に特化した宿泊施設になった。観音は13年、石川県金沢市に本部がある宗教法人が購入。現在は同法人の北海道分院として運営されている。 1991年に建立された宮城県仙台市の「仙台天道白衣大観音」は、台座部分も含めて高さ100メートル。淡路島の世界平和大観音と並んで日本一となった。建てたのは地元の不動産開発会社で、その近隣にホテルやゴルフ場を経営していた。2001年に真言宗系の宗教法人が設立され、仙台大観音はその宗教法人の所有となった。不動産開発会社は東京の企業との合併を経て、2004年に倒産。仙台大観音はいまも同宗教法人が運営している。 このように所有者が転々とした観音像は、80年代から90年代初期の景気がよかった時期に観光施設の一部として多額の費用をかけて建立された。建立者の多くが不動産開発や、建設事業などで成功した地元の業者だったことも共通している。だが、バブル崩壊後に来場者が急減し、経営が厳しくなるなか、当初の建立費や施設への過剰投資が回収できず、倒産するところが増えていった。 そうした過程でもう一つ共通するのが、当初は企業など営利法人が所有するも、途中から宗教法人に運営が変わっていくことだ。
宗教法人というメリット
ある宗教法人の役員は、巨大観音像は宗教法人が所有すると経済的なメリットが大きいと話す。 「巨大観音像は、営利法人が所有すれば固定資産税の対象になりますが、宗教法人が所有すれば非課税です。神社やお寺の建物と同じ位置づけです。宗教法人なら拝観料やお賽銭も非課税になります」 ちなみにこれまで紹介した中で、淡路島で解体中の世界平和大観音像、すでに撤去された長崎の七ツ釜聖観音は宗教法人の所有ではなかった。この役員は、「税制で優遇されるからといって宗教法人が楽々と観音像を維持しているわけではない」とした上でこう続けた。 「完成直後の観光ブームが去れば、観音像の拝観料などの収入が減ります。そうなると、人件費を含めた運営はもちろん、観音さまのメンテナンスにかかるコストも賄えなくなってしまうからです」