老朽化で解体も……全国に存在する巨大観音像 建立の理由と管理の難しさ
ただし、すでに撤去された巨大観音はある。長崎県西海市にあった「七ツ釜聖観音」だ。同観音は1990年にレジャー施設「長崎西海楽園」の中に建てられ、黄金に輝く姿が親しまれた。 「オープン当初は、佐世保市のハウステンボス(1992年開園)など他のテーマパークができる前で、たいへん賑わったと聞いています」 地元の西海市観光協会はそう説明する。観音を建てたのは地元の第三セクターだった。 1972年に砕石会社が観光ホテルを建設。その後、西海町(現・西海市)も資本を入れて第三セクターの運営会社がつくられ、90年に観音を含めた長崎西海楽園がホテル周辺にオープンした。 七ツ釜聖観音は全体を輪切りのように製造して積み上げる工法で、完成後、台風で頭部が落下する事故が起きたこともある。そうした危険性もあったためか、2007年に西海楽園が閉鎖されると、運営会社によってすみやかに七ツ釜聖観音は撤去された。
全国に残る巨大観音の一部には、ある共通点が見られる。バブル期に建立され、その後に所有者が変わっていることだ。なかには2回、3回と流転したところもある。行政への取材や登記、過去の報道をもとにまとめると次のようになる。
バブル期に建立された観音
石川県加賀市の「加賀大観音」は、1988年に観光施設「ユートピア加賀の郷」の中に建てられた。高さ73メートル、工費は約35億円だったという。 「加賀の郷」は関西の不動産会社が約280億円を投じて建設。施設内には遊園地、パットゴルフ場、美術館などがあり、オープン当初は年間50万人が訪れたという。
その後、施設内に観音と寺もつくられたが、建設した不動産会社は97年に倒産。別の宗教団体が運営に乗り出すも、加賀市が観音など不動産を差し押さえ、整理回収機構が6年ほど監理。2006年に大阪市の医療機器販売会社が競売で落札した。 しかし、報道によると、老朽化した観音像に対して住民から撤去を求める声があがっているという。市は2021年10月、観音像の撤去も視野に入れた加賀温泉駅周辺の住宅・商業エリア開発のプロジェクト「加賀ライズタウン構想」を発表している。