空中で操る「肥後ちょんかけごま」世界を席巻…保存会会員がコンテスト優勝、新技を生み出しつつ伝統守る
熊本県内各地に残る遊びや言葉、祭り、匠の技、街並みなどの景観は、熊本独自の風土と歴史によって生みだされ、人の営みで守られてきた財産だ。世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の登録から10年となる今年、さまざまな「熊本の遺産」を次世代につなごうとする人たちを紹介する。 【写真】技を披露する保存会の会員
正月の遊びと言えばこま回し。木製で赤や緑、黄の同心円が鮮やかな肥後こまの中にあって、皿状の形をした「肥後ちょんかけごま」は地面では回さない。長さ2メートルほどのひもの端を両手に持ち、ひもにこまを乗せて回転させ操るもので、保存会が新たな技を生み出しながら継承している。
「もっと高く上げんと」。熊本市北区の高平台小で昨年12月初旬、ちょんかけごまが空中でクルクルと回っていた。
保存会が20年ほど前から毎月、市内の小学校で行っている指導の一コマだ。参加したのは児童7人。会員の男性がこまを空中に投げ、児童がこまの芯にひもを引っかけて受け取る。6年生の児童(12)は「難しいけど技が成功すると楽しい。いろんな人にやってほしい」と話した。
ちょんかけごまには「本かけ」「小振り」「脚くぐし」などの基本技から、こまをかけたひもで行う「なわとび」、体を中心にこまが周回する「トルネード」などの特殊技もある。
武士の遊びが起源
もともと武士の遊びが起源で、明治以降は民間でも流行したが、戦後急速に廃れていった。1968年、石坂繁熊本市長(当時)が提案したちょんかけごまの大会をきっかけに、経験者らが集まり翌年に保存会を結成。その技は75年に市の無形文化財に指定された。
会員は県内外の53人で10~90歳代。週末に熊本城二の丸広場で演技を披露しており、年明けの2日も、会員10人ほどが新年の初振りを行い、居合わせた子どもたちと交流した。保存会顧問の川口英徳さん(82)は「こまを通して、私たちも子どもたちから元気をもらえる」と笑顔を見せた。
会員は2021年度から、世界大会「ワールド・スピントップ・コンテスト」に参加している。