最近、耳が…それ、加齢性難聴かも 専門医が指摘する放っておくと高まるリスク 「年1回は聴力検査を」
年を重ねるにつれて聴こえが悪くなる加齢性難聴。放置すると、聴覚刺激の減少で認知症の発症リスクが高まることが明らかになっている。現状は治療法がなく、早期の発見と対策が欠かせない。 【写真】しっかり対策をすれば「認知症などのリスクは減らせる」と説明する山下勝教授
鹿児島大学耳鼻咽喉科・頭頸部(けいぶ)外科の山下勝教授(53)によると、聴力の衰えは音を感知する耳の中の有毛細胞の機能が加齢によって弱まるのが原因。両耳の高音域から徐々に聴き取りにくくなる。 一般に40代から低下する傾向にあり、75歳以上の約半数が聞こえにくさを感じるという。加齢性難聴の進行は遺伝や糖尿病、騒音、喫煙が作用するとされ、放置すると社会的孤立やうつなどのリスクが高まる。 注目を集めたのが2017年の英医学誌ランセットに載った論文だ。認知症の35%はリスクを除くことで予防可能とし、うち難聴が最も多い9%だった。昨年7月の最新評価でも、難聴は高脂血症と共に最大要因で7%を占めた。 山下教授によると、正常な聴力の目安は鉛筆の筆記音に相当する25デシベル。学校や職場では健診でチェックできるが、リタイア後は機会がなく「注意を要する世代が気付きにくい」と指摘する。加齢性難聴には有効な治療法がなく、予防には生活習慣病の管理や規則正しい生活が大切だ。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は昨年9月、80歳で30デシベルの聴力を保つ「聴こえ8030運動」を始めた。ささやき声に相当し、補聴器を使う人も含めて80歳の約3割が維持するとされる。20年後に5割まで伸ばすのが目標だ。 山下教授は「加齢で聴力が衰えても補聴器などの対策で認知症などのリスクは減らせる。音が聞こえにくいと思ったり家族への聞き返しが増えたりしたら、年1回は耳鼻咽喉科で聴力検査をしてほしい」と勧める。
南日本新聞 | 鹿児島