「新宿東口の猫」のイメージモデルに選ばれた三毛猫・ナツコ「根拠のない自信」が採用の決め手に飼い主も思わず納得
2021年7月、JR新宿駅東口のビルに出現した巨大猫。 思わず見上げてしまうその猫の圧倒的な存在感が新宿という街に溶け込んでいる。 【写真を見る】決め手となったSNSに投稿された一枚。キャプションには「ほくそ笑む猫」 そのイメージモデルとなった猫が存在する。三毛猫・ナツコだ。 長年、猫の取材を続けてきたフリーランスライター・佐竹茉莉子さんの著書『猫は奇跡』(辰巳出版)から、ナツコがどのようにしてイメージモデルになったのか。そのエピソードを一部抜粋・再編集して紹介する。
思わず見上げる「新宿東口の猫」
「新宿東口の猫」の住むクロススペースは、新宿駅東口を出てすぐの交差点前の広場の正面にある。時間をおかず何度も猫が登場するから、信号待ちの人々は、みな口元を緩めてビルを見上げ、スマホで撮影する人も多い。 濃い三毛柄の猫は、意志の強い顔立ちをしていて、勝手に猫語で話しかけたり、ゴロンゴロンしたり、大画面から今にも飛び出しそうにして、まったりと暮らしている。 不敵さと愛嬌を併せ持ち、2021年7月の華々しい初登場以来、会いに行く人が絶えない人気者だ。 オスの三毛猫という設定だが、名前はない。彼は、メディアアーティストの山本信一さんによって生み出され、世に送り出された。 「街頭ビジョンのプロジェクトは、東口地区の活性化を目的とするためのクロス新宿ビルからのオーダーでした。6案出しました。岩に打ちつける雨などのアート系に加えて、手描きの猫も滑り込ませたんです」と、山本さん。 いわば「おまけ案」だった、その猫案が「面白い」と採用された。
SNSで見つけた“理想の猫”
さまざまな猫での作画が何ヶ月も繰り返される。だが、どの猫も山本さんにはピンとこない。そこに住んでいるという存在感をもっと強く打ち出したかった。 だが、「こんな猫」というニュアンスは言葉ではCGデザイナーには伝わりにくく、「では、理想の猫はこれだと、提示してください」と返された。 猫好きの山本さんは、以前からいろいろな猫の写真をSNSで見まくっていたのだが、街頭ビジョンの猫制作にあたり、来る日も来る日もSNSの猫写真を見まくる日々が数ヶ月続く。 そんなある日流れてきたのが、一枚の三毛猫の写真。目が釘付けになった。 灯りの下、パソコン脇にドサッと体を投げ出し、人を食った表情の三毛猫がこっちを見ていた。キャプションには、「ほくそ笑む猫」とある。 その猫は、常日頃山本さんが一番の猫の魅力だと感じている「根拠のない自信に満ちた強気」をまさしく体現していた。 すぐに「存在感的に、この猫で!」とCGデザイナーに伝え、東口の猫が誕生する。