東京~サンフランシスコが6時間に JALも出資する超音速旅客機「オーバーチュア」のインパクト
新時代の超音速飛行の課題
超音速飛行はさまざまなメリットが期待されるが、リスクについてはどのような見方があるのだろうか。 航空情報会社シリウムのシニア・コンサルタント、リチャード・エバンス氏が2023年にCNNに語ったところによると、オーバーチュアの運行を採算に乗せるには、同機を従来の長距離路線の飛行機と同じぐらい、つまり年間4,000~5,000時間稼働できるかどうかにかかっていると試算している。 コンコルドの稼働時間が年間約1,000時間程度だったこと、またオーバーチュアの投入は高収益路線に限定されるとの推測に基づくと、航空各社の採算が合うかどうかが懸念される。 エバンス氏はまた、2029年の商用化についても「難しい」との見方を示している。現在の航空機の改良型である「ボーイング777-9型機」でさえも商用化までの認証に12年ほどがかかることを指摘し、「ブームが何十億ドルもの資金を集めることができたとしても、これから(2023年から)さらに6年以上の時間がかかるだろう」と予想している。 一方、環境への負荷を懸念する声も上がっている。まずはSAFの供給が十分に確保できるかが不安視されているほか、たとえオーバーチュアがSAFのみを使用しても、スピードを出すための燃料消費量は従来の航空機よりも多くなる上、乗客キャパシティが最大80人となると、1人あたりのエネルギー消費量は従来よりも増えてしまう。 オーバーチュアの課題は多いが、技術的にはすでに50年前からの蓄積がある。ショールCEOは、「(認証取得は)非常に複雑なプロセスだが、電気飛行機や垂直離着陸機とは違って、認定を受けるために全く新しい規制は必要ない。これも飛行機なのだ。飛行速度が違うだけだ」(CNNより)と語っている。 超音速飛行で世界を劇的に小さくするブームの挑戦は、これから正念場を迎える。今年もその進展に注目したい。
文:山本直子 /編集:岡徳之(Livit)