東京~サンフランシスコが6時間に JALも出資する超音速旅客機「オーバーチュア」のインパクト
コンコルドの問題を克服
超音速飛行が技術的に可能であることは、すでにコンコルドが証明している。同機はイギリスとフランスが1960年代に開発したもので、ニューヨーク~ロンドン間を3時間で結んでいた。しかし、このパフォーマンスを維持するのに莫大な燃料コストがかかり、採算が合わなかったところ、2000年に起きた墜落事故や01年の米同時多発テロ事件による航空業界への逆風が最終的な打撃となり、2003年には撤退したという経緯がある。 ショールCEOによれば、オーバーチュアがコンコルドよりも安い価格設定ができるのは、過去50年間の航空機技術の発展によるものだ。オーバーチュアは、軽くて強い炭素繊維複合材料の品質やソフトウエア技術の向上などにより、コンコルドよりも格段に燃費がいいという。 燃費とスピード以外にもブームが注力しているのは、騒音の低減だ。ブームはこれを克服するため、「シンフォニー」と名付けられたエンジンを開発中。爆音の元となるアフターバーナー(排気にもう一度燃料を吹きつけて燃焼させ、高推力を得る装置)なしの設計で、エンジン1基当たりの推力を抑える一方、オーバーチュアへの搭載を当初計画の3基から4基に増やした。シンフォニーには自動騒音低減システムも搭載される予定で、騒音を現在の大型ジェット機並みに抑える計画だ。 シンフォニーはまた、サステイナブルな航空燃料(SAF)だけで作動するように設計されている。植物などを原料とするSAFは、原材料の生産から燃焼までのサイクルの中で、従来のジェット燃料と比べて二酸化炭素の排出量を最大80%削減できる。新時代の超音速飛行が環境面に配慮している点も、コンコルド時代からは変化している。
2029年の商用化、JALも発注権を確保
コロラド州デンバーを本拠地とするブームは現在、ノースカロライナ州グリーンズボロにオーバーチュアの製造拠点を建設している。2024年内の完成を予定しており、この敷地に最終組立ラインやテスト施設、顧客配送センターを設ける。 オーバーチュアの小型テスト機である「XB-1」は2020年に完成し、昨年中に連邦航空局から耐空証明を獲得し、広範な飛行準備審査(FRR)を通過した。昨年からカリフォルニア州で地上走行テストを実施しており、2024年3月22日には初飛行に成功したと発表した。 オーバーチュアの製造は今年から開始される予定で、2025年の完成、2027年のテスト飛行、2029年の商用化が見込まれている。これを見据えて航空会社もすでに動き出しており、米ユナイテッド航空は2021年、オーバーチュア15機を発注し、35機のオプション(仮発注)を追加。アメリカン航空も2022年に20機を確定発注し、40機のオプションを追加している。 また、JALは2017年12月にブームと戦略的パートナーシップを締結し、同社に1千万ドル(当時約11億円)を出資した。同時に、オーバーチュア20機までの優先発注権を確保している。