東京~サンフランシスコが6時間に JALも出資する超音速旅客機「オーバーチュア」のインパクト
飛行時間の半減がもたらす新たな需要
超音速飛行がもたらす市場へのインパクトは、飛行機が初登場したときほど劇的な変化をもたらすものではないが、それでも飛行時間の半減は、旅行需要や人々の交流関係にさまざまな影響を及ぼすだろう。 ブームによれば、2019年にオーストラリアを旅行したアメリカ人は全体の0.2%と推定されている。しかし、現在15時間以上かかる飛行時間が9時間になったら、オーストラリアに行ってみようかと思う人も増えるのではないだろうか。 スポーツの世界でも変革は起こり得る。選手にとっても観客にとっても、飛行時間の半減は大会へのアクセスを容易にする。スポーツの国際大会はより頻繁に開かれるようになるかもしれない。同様の理由で、音楽のライブコンサートなどにも新たな需要をもたらすだろう。 しかし、何よりも需要増が見込まれているのは、ビジネス旅行だ。ロンドン~ニューヨーク間が3.5時間で飛べれば、日帰り出張も可能になる。時差ボケになる間もなく、仕事を終えた後は、自宅のベッドで寝られるというわけだ。 コロナ禍では「Zoom会議」が一世を風靡したが、今日、海外出張に対するマインドセットは完全にコロナ禍以前のレベルを回復している。調査会社Skiftと旅行アプリ開発のNavanによるアメリカ、イギリス、フランス、ドイツを拠点とする企業の出張・財務マネージャー689人と出張者778人を対象とした調査では、「企業の成長にとって出張は極めて重要である」と認識する人が9割に上り、2021年の70%台から急回復していることが明らかになっている。 ちなみに航空業界全体の需要については、長期的な成長を予想する向きが強い。IATA(国際航空運送協会)は2023年12月のレポートで、2024年の旅客輸送量(旅客キロ:RPK)が前年比で40%増加し、パンデミック以前の水準まで回復すると予想。2040年までにRPKは倍増するとの見通しを示している。また、国際空港評議会(ACI)も2024年2月のレポートで、世界の総旅客輸送量が2042年に200億人近くに達し、2024年から倍増すると予想している。