「庶民の味方」「種類が多くて悩む」…QBBの六甲バター、「チーズの種類多すぎ」を生む組織作りの”秘訣”は「開発先導型」な社風にあった!
■「開発先導型」で、挑戦をする組織風土を生む これだけ種類が多い理由は、「新しいことへの挑戦を後押しする社風」にあるそうだ。 この社風は、前会長で現相談役の塚本哲夫氏が常々、「開発先導型活力企業であるべき」「進取の気性を持て」「常に新しいことに取り組んでいこう」などと、社員に語りかけていたことにはじまったという。 具体的にはどういうことか。たとえば新製品発売前に行われる、経営陣の承認を得る会議。この際に同社では基本、「おいしければ承認し、応援する」姿勢だそうだ。もちろん、最低限の利益率の目安は商品ごとにあるが、あえて明確な線引きは設けられていない。
それよりも、絶対に妥協できないのは味。味の担保と材料費のバランスについて、毎回徹底的に議論して、なんとか納得できる妥協点をみつけるという。だからこそ、クオリティが高く、なによりおいしい製品が生まれるのだ。 この姿勢は経営陣だけでなく、社内にも広く浸透している。2022年、ベビーチーズの「焦がしにんにく&ねぎ油風味」の開発の際は、工場から、「この商品を作ると工場全体がにんにく臭くなる」とクレームが出たそうだ。でも、味はどの部署の人が食べてもおいしいと感じられた。「ならば、匂いを気にせず売ろう」と即決したそうだ。
結果、「焦がしにんにく&ねぎ油風味」は販売後すぐにヒット。すると工場は「よかったやん」と喜び、「売れるんやったら協力するで」と、さらに協力体制が強まった。 「新しい製品や味づくりについては自由度が高いですね。たとえ若手でも、誰かが一生懸命考えたことを、頭ごなしに駄目という文化はありません」と六甲バターのマーケティング本部長・黒田浄治さんは穏やかに話す。 ■部署間の連携、風通しの良さを作る工夫
さきほどのエピソードでも垣間見えるが、六甲バターでは、部署間の連携を大切にしている。ものづくりをする企業においては、得てして、作る側と売る側の連携がとれていないことも多い。だが六甲バターには、「部署の垣根を越えて議論できる」土壌があるという。 特に製品開発の現場では、ブランディングや味を考える段階から、マーケティング部と製品開発部、営業本部で徹底的に議論を重ね、深めているそうだ。順を追って言えば、まずマーケティング部が消費者調査をしてニーズを掴み、方向性を決めて、営業本部と製品開発部と共有。製品開発部がそれに基づく製品を提案し、営業本部がその販売方法を考えるという流れ。この節目節目で集まって議論を交わし、最終的にお互いが納得したうえで、上層部に上申するスタイルをとっている。