不動産の「相続登記」と「名義変更」の違いは?…相続で名義変更を怠った場合の主な“3つのリスク”【弁護士が解説】
不動産の名義変更手順と必要な準備
不動産の名義変更には、正しい手順と十分な準備が欠かせません。以下で詳しく解説します。 不動産の名義確認 不動産を相続する際や名義変更を行う前に、まずはその不動産の所有者や権利状況を確認することが重要です。単に不動産の場所を知っているだけでは十分ではなく、所有者や権利関係の詳細を把握しておく必要があります。 なぜ名義確認が必要なのか? 「父親が所有していると思っていた土地が祖父名義のままだった」や、「住宅ローン返済後も担保が残っていた」というケースは珍しくありません。このような場合、相続手続きには祖父の相続人全員の協力が必要となり、担保の抹消手続きも求められます。その結果、手続きや必要書類が大きく変わる可能性があります。 不動産の名義や権利状況の確認方法 不動産の権利関係を確認するには「登記事項証明書」を取得します。ここには所有者情報や担保権、不動産の場所や面積などが記載されています。この証明書は法務局で誰でも取得可能で、相続手続きにも役立ちます。 登記事項証明書の取得方法と注意点 取得方法には、法務局窓口、郵送、オンラインがあります。不動産特定には「地番」や「家屋番号」が必要ですが、住所と異なる場合があるため注意が必要です。これらは固定資産税の通知書や登記済権利書に記載されていますが、ない場合は法務局で調べることも可能です。
名義変更に必要な被相続人・法定相続人に関する書類 名義変更には、被相続人と法定相続人に関する書類が必要です。各書類の入手方法や重要なポイントについて抑えておきましょう。 被相続人に関する書類 ・戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍 入手先:被相続人の本籍地の市区町村役場 取得方法:窓口または郵送・オンライン申請可能。申請には本人確認書類が必要。出生から死亡までの全ての戸籍を揃えます。 備考:相続人確定のために必要です。 ・住民票の除票または戸籍の附票 入手先:住所地または本籍地の市区町村役場 取得方法:窓口・郵送・オンライン申請可能。本人確認書類が必要。 備考:登記簿上の住所確認に使います。転籍があればその分も取得します。 ・死亡後に発行された戸籍謄本 入手先:被相続人の本籍地の市区町村役場 取得方法:死亡日以降に窓口または郵送で申請。 備考:死亡の証明として使用。 ・固定資産課税明細書 入手先:所有者に毎年市区町村から郵送。紛失時は役場で再発行可能。 備考:登記申請時にその年度のものが必要です。 法定相続人に関する書類 ・住民票 入手先:相続人の住所地の市区町村役場 取得方法:窓口または郵送・オンライン申請可能。 備考:新しい所有者となる相続人の住民票を提出します。 ・印鑑証明書 入手先:住所地の市区町村役場 取得方法:印鑑登録後に申請。郵送・オンライン申請も可能。 備考:遺産分割協議書の実印押印確認に使用します。 作成が必要な書類 ・登記申請書 作成者:相続人または代理人 備考:法務局のウェブサイトから様式をダウンロード可能。自作も可能ですが、複雑な場合は司法書士に依頼するのも一案です。 ・委任状 作成者:相続人 備考:代理人が登記申請を行う際に必要です。 ・遺産分割協議書 作成者:法定相続人全員 備考:相続人全員の署名・実印が必要。 ・相続関係説明図 作成者:相続人または代理人 備考:家系図形式で相続関係を図式化します。 登記申請の手続き、申請書の作成方法 登記申請書を法務局に提出することで、不動産の名義変更を行います。2024年4月以降は相続登記が義務化されるため、手続きを怠るとペナルティが発生する場合があります。 登記の目的:「所有権移転」や「持分全部移転」など。 原因:被相続人の死亡日を記載。 相続人情報:住所や持分割合を記載。 添付書類のリスト:戸籍謄本や住民票など。 不動産情報:登記事項証明書をもとに記載。 申請方法:登記申請書と添付書類を不動産所在地を管轄する法務局に提出。登録免許税は課税価格の0.4%を収入印紙で納付します。審査後、登記識別情報通知や登記完了証が発行されます。