【カネの傭兵】プライベートバンカーは知っている、お金持ちが絶対にしないこと
気鋭のノンフィクションライター・甚野博則氏の新刊『ルポ 超高級老人ホーム』が話題だ。富裕層の聖域に踏み込んだ同書では、選ばれし者のみが入居する「終の棲家」を徹底取材している。本稿では、超富裕層を顧客にプライベートバンク事業を展開するアリスタゴラ・アドバイザーズ会長の篠田丈氏に、プライベートバンカーだけが知っている富裕層の実態について伺った。(取材・構成 ダイヤモンド社書籍編集局) ● 富裕層の資産を守る 「カネの傭兵」たち ――『ルポ 超高級老人ホーム』ではプライベートバンクで働いていた入居者が印象的でした。日本でプライベートバンカーとして働いている人はどのくらいいるのでしょうか。 篠田丈会長(以下、篠田):プライベートバンカーと呼ばれている人はいますが、実際欧州のプライベートバンカーと同じことをしている人はほぼいないです。そういう存在を目指してる方は、もちろん何人かはいます。 企業というよりは、個人に近い形でやっている方が多い印象です。クレディスイスやUBSなどが有名ですが、そういう企業に所属していても日本だと限界があるのかもしれません。 ――日本における富裕層とはどんな人たちなのでしょうか。 篠田:それこそ、ソフトバンクの孫正義さんをはじめ、ファーストリテイリングの柳井正さんなど、長者番付に載る有名な財界人はいます。でも、名前が全然知られていない人でも、100億単位で資産を持ってる方は結構いらっしゃるんです。 ――何をして資産を増やしているのでしょうか。 篠田:皆さんほぼ事業をやってる方ですね。大企業のサラリーマンとして、お金持ちになっている方ももちろんいます。ただ、100億円以上の資産となると、サラリーマンではなかなか難しいのが日本の現状です。何十億っていう方はもちろんいますけど。 ● 「真の富裕層」は 資産をひけらかさない ――100億円以上の資産を持っているような超富裕層に共通する点はありますか。 篠田:まず、自身の資産について話さないと思います。お金を持っていると思われたくないでしょうし、来る人来る人皆お金目当てにきてると感じるのもしんどいでしょう。 それと、資産が100億円超えの方って将来の不安がもうないんです。貸したお金は返ってくるんだろうかとか、ちょっとした心配はあるんですけど、将来お金がなくなって困るかもしれないという不安はもうないですよね。でも、20億から30億円ぐらいの人はまだ将来の不安があるように感じます。 ――20億、30億円のお金が手元にあっても不安を感じるのが意外です。 篠田:お金って、入ってくる金額が増えると出ていく金額も増えるんです。入ったお金がそのまま手元に残ることは思ったより少ないですね。隠れて暮らしていれば別ですけど、20億円とか30億円の資産があるということは、ビジネスでも相当大活躍されてる方ですよね。 そうすると、交友関係もあってこその資産なんです。その交友関係を維持するのにもお金がかかります。お金持ちの方の話を聞いていると、海外旅行に一緒に行きましょうだとか、お金のかかる遊びをしていたりしますからね。やっぱり出ていくお金も多いようです。 篠田 丈(しのだ・たけし) アリスタゴラ・グループCEO 2011年3月から現職。1985年に慶応義塾大学を卒業後、日興証券ニューヨーク現地法人の財務担当役員、ドレスナークラインオート・ベンソン証券及びINGベアリング証券でエクイティ・ファイナンスの日本及びアジア・オセアニア地区最高責任者などを歴任。その後、BNPパリバ証券で株式・派生商品本部長として日本のエクイティ関連ビジネスの責任者を務めるなど、資本市場での経験は30年以上。現在、アリスタゴラ・グループCEOとして、日本、シンガポール、イスラエルの拠点から、伝統的プライベートバンクと共に富裕層向け運用サービスを展開、また様々なファンドを設定・運用、さらにコーポレートファイナンス業務等を展開している。
篠田 丈