教員から…気付けなかった性被害 20年が過ぎ「普通の恋愛と違った」 きょう“日本版DBS”審議入り
こどもに接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する制度「日本版DBS」を含む法案(こども性暴力防止法案)の審議が9日、国会で始まる。DBSとは、モデルとなっているイギリスの制度「Disclosure and Barring Service」の頭文字をとったもの。こどもへの性犯罪をなくすための活動を行っている石田郁子さん(46)は、中学卒業間近から4年あまり、中学の美術教員の男性から性被害を受けていた。日本版DBSへの期待と課題、教員からの性被害を気付けない実情を聞いた。 ▼“職業選択の自由を制限”指摘も…再犯リスクに近づかないことは「当たり前」 性加害・小児性愛の治療専門家【日本版DBS】
■中学の卒業式前日 「招待券があるから」という誘い
石田さんは、中学の美術教員から「招待券があるから」と誘われ、中学卒業式前日、一緒に美術館を訪れた。美術を頑張っていたから連れていってくれるんだと思ったという。石田さんは美術館でお腹が痛くなり、教員にそれを話すと車で教員の自宅に連れていかれ、「実は好きだった」と告げられ、拒んだもののキスされたという。 「何が起きたかわからなくて、怖いとか気持ち悪いとかが何もない。今振り返ると、あまりに怖すぎて自分が感じる範囲を完全に超えてしまって麻痺した状態」 高校時代は2~3か月に1度会うなどし、性行為などの被害は4年あまり続いた。男性との交際経験がなかった石田さん。罪悪感や不安もあったが、知られたら怒られるなどと思い、親にも相談できなかったという。
■教員=絶対的立場による加害 「断る発想はそもそもない」
当時、石田さんは性被害を受けていると認識できなかった。なぜなのか。 「学校の先生だという部分がかなり大きい。もともと尊敬の気持ちを持っていて、教員から好意を告げられた時に、尊敬とか憧れとか、ちょっと混同してしまう。同年齢の知らない男の人から言われたら、“ちょっと変かな”と思うかもしれないけど、先生だと非常に混乱する」 「当時の私の性犯罪のイメージは、夜道を大人の女性が1人で歩いていて怖そうな男の人に襲われるってものしかなくて、(自分の例は)そういうのじゃないって」 教員による脅しや口止めなどがあったわけではない。手紙を交換したり、スキーに行ったり、恋人同士のような行動もあったという。しかし、石田さんの希望を聞くことや話し合いはまったくなく、どのスキー場に行くかも当日会ってから告げられたという。 「先生の言うことを生徒は聞くという関係が作られていて。『今度いついつに会おうか』と言われて、その通りにした、断る発想はそもそもない」 性被害に詳しい専門家によると、加害者が教員など絶対的な立場の場合、被害者を巧妙に手なずけ、被害者は心身ともに支配されたような状態で、“恋愛だ”などと思い込まされ、被害だと気がつかない場合も多いという。