「開発チームが語るスズキGSX-8Rの実力」GSX-R不在の時代に現れた、サーキットもイケるフルカウルスポーツ
テストライダーが語る実力「サーキットを攻め込んでも非常に安定して走れる」
テストライダーを務めた品質管理グループの佐藤洋輔さんはGSX-8Rの走りのキャラクターについて、開発時に苦労した点を交えながらこのように説明する。 「これまでのスズキのどのバイクも、ライダーの走行フィーリングを重視して開発しています。GSX-8Rを開発していくなかでスズキがこだわったところを説明いたします。まずエンジンは、リニアなトルクと広いパワーバンド、各操作性……たとえば電子制御スロットルですとかクイックシフトですね、操作性を重視して開発しました。モードを選択できるSDMSですが、以前のミドルクラスGSX-S750にはついていませんでした。なぜならメカニカルスロットルだったので、出力を3種類に分けることがむずかしかったのです。 極端な話をすると、電子制御スロットルだと、たった1°開けただけでもエンジンを全開にすることができます。当然、危ないからそんなことは絶対にやりませんけど、そういう制御ができるようになったということで、たとえばAモードではスロットルを開けていく過渡の領域でのスペック以上の体感出力を得ることも可能になりました。逆にCモードは雨の日でも、いつもと同じように開けていける。それくらい出力の差を設けることができるようになりました。何度もCモードのテストをしましたが、雨の日……走るのイヤだなと思って走りはじめるんですけど、それでもスロットルをガンガンと開けて走れると、『雨の日もこんなに走るの楽しいんだ』と思えるようになりました」 走行モードはずっと固定したまま乗っている人も多いものだが、それでは最新技術がもったいない。GSX-8Rでは違いを明確にすることで、ライダーが積極的にモードを変更して「安全と楽しさ」を両立できる設定としている。 「ライディングポジションは、サーキットを本気で走るのならもっと前傾にしてステップも上げたり後ろへ下げたりする必要がありますが、そうすると自然で乗りやすいポジションではなくなってしまいます。それでもフレームの剛性やサスペンションの限界性能が高いので、ステップを擦るほど攻め込んでも車体は非常に安定したまま走れます」 メインステージはあくまで一般道であって、ワンランク上のスポーツライディングを楽しむサーキットも不満ないレベルで走れる拡張性を持つ。それがGSX-8Sと最も異なるGSX-8Rの魅力であり、個性なのだろう。 「さまざまな機種開発に携わったなかで、自分には共通のコンセプトというようなものができました。それは自然で乗りやすいバイクが理想ということです。乗りはじめてすぐ手に馴染むというか、以前からずっとこのバイクに乗ってたんじゃないかと感じられることが私の理想です。乗りやすいマシンは楽しいし、速くも走れるます。GSX-8Rはエンジンもハンドリングも私の理想に近い、非常に自然で乗りやすいバイクに仕上がっていると思います」