<ネタバレあり>ホラーから愛の大団円へ「照明店の客人たち」 周到な伏線と鮮やかな転換を検証する
第4話、衝撃のラストシーンからの怒濤展開
そして第4話。この回も奇怪なエピソードが進んでいくのだが、ラストシーンに衝撃が待っている。病院内をワンカットで移動していく俯瞰(ふかん)ショットで、謎が一気に明かされるのだ。登場する人物たちに共通するあること、看護師のヨンジと照明店主が生と死の〝結び目〟であること。そしてここまでのすべてが、たっぷり4回分をかけた周到な伏線だったと気づくのである。その転換の鮮やかさもさることながら、支離滅裂な物語を全く飽きさせずに引っ張ってきた脚本と語り口に改めて驚嘆させられる。 後半の4回、物語は張り巡らせた伏線を回収しながら展開する。もちろん、単なるつじつま合わせにとどまらない。ここまで登場してきた人物たちに、それぞれの秘められた物語がある。前半のホラー的な引きからは、憎しみと争い、血まみれアクションに至るかと思いきやその予想も裏切られ、彼ら彼女たちの人生の悲劇の瞬間と、果たせぬ思いが切々とつづられていく。シリーズの終盤、視聴者が見るのは流れる血ではなく、たくさんの涙だ。第1話から繰り返し登場するスーツケースの女を拾う男は、なぜいつも赤いシャツを着ているのか、刑事のライターはなぜ火が付かないのか、そんな小さな点に至るまで念入りにすくい取っていく芸の細かさにも注目だ。 前半と後半で物語の雰囲気も内容もガラリと変わるが、同時に一貫したドラマがつながっている。思えば「ムービング」もシャイな高校生の学園恋愛ドラマのように始まり、SFファンタジーから壮絶なバトルアクションへと大展開していった。ベクトルが異なるとはいえ、仕掛けを張り巡らせていくつものジャンルを融合させつつ、大団円へと収束させる群像劇という骨格は今回も健在なのだ。
生きる意志を持つとは
さてここからは、さらなるネタバレに踏み込みながら、ドラマの核を検証してみよう。カギとなっているのは「臨死体験」である。心臓が止まった状態から蘇生した人の中に、不思議な体験をしたと語る人がいるそうだ。お花畑で安らかな気分になったとかトンネルの中にいたとか、あるいは懐かしい人に会ったとか光を見たとか。文化圏を超えて共通する要素があるらしい。1990年代中ごろに出版された「臨死体験」(立花隆著)がベストセラーになって、一般にも広まった。 照明店があるのは生と死の境界地点、ここに出入りするのは臨死体験中の命なのである。照明店にある電球は一人一人の命の明かりで、電球が壊れると現世には戻れず死後の世界の住人となり、一方で自分の電球を見つけて輝きを取り戻せば生き返ることができる。照明店主はいわば門番として、電球の行く末を見守っている。一方看護師のヨンジは、臨死体験を経て死者を見、言葉を交わす力を身につけてしまった。彼女は死にひんした患者を励まし、心配する付き添いの家族に「患者の生きようとする意志次第だ」と繰り返す。意識のない人がどうして生きる意志を持てるのか、とヨンジ自身も問いかけるのだが、照明店を訪れる人を見ればその答えが分かるのだ。 この群像劇の一番の大仕掛けは、照明店主その人にある。彼自身も知らなかったその秘密が明かされる場面は感動必至だが、そこは見てのお楽しみとしておこう。
ひとシネマ編集長 勝田友巳