<ネタバレあり>ホラーから愛の大団円へ「照明店の客人たち」 周到な伏線と鮮やかな転換を検証する
タイトルを聞いたときのイメージは〝こじゃれた照明ショップに集まる男女の、笑いと涙の恋愛群像劇〟。見始めたらぜんぜん違う。ホラーだった! ところが、オカルトなのかサイコスリラーかと思って前のめりになっているところに、第4話の最後で大どんでん返し。さらに後半、謎が明かされた後は怒濤(どとう)の人間ドラマへとなだれ込む。そして最後に気づく。タイトルからの印象、あながち間違いではなかったと。愛の物語なのである。ディズニー+で配信中のドラマシリーズ「照明店の客人たち」、予測不能、ジャンルを横断して突き進み、思わず一気見。同じディズニーで大ヒットした「ムービング」と同じ、ウェブトゥーン作家のカン・プルが原作・脚本を手がけている。 【写真】物語の鍵を握る看護師のヨンジ(パク・ボヨン) 「照明店の客人たち」の一場面
バス停で男を待つ女、雨の夜……
第1話、夜のバス停の真っ暗なベンチに、大きなスーツケースを持った女が座っている。バスから降りた赤いシャツの男が話しかけると、女は「私を知っていますか?」。土砂降りの雨の中、ずぶぬれの女を見かねて傘を差し出すと家まで付いてくる。男は女を部屋に招き入れてしまったが……。望月峯太郎のマンガに、親切心から声をかけた女に付きまとわれて恐ろしい目に遭う「座敷女」というものすごく怖い作品があったが、この導入、まさにそんな感じ。ただこのエピソードはここでいったん中断され、次々と別のシークエンスが後に続く。 大学病院のICU(集中治療室)担当の看護師ヨンジ(パク・ボヨン)は、病院内をうろつく男に声をかけられる。女子高生のヒョンジュ(シン・ウンス)は学校で不思議な人影を見かける。物書きのソネ(キム・ミンハ)が借りた格安の部屋には開かずの間があり、刑事(ペ・ソンウ)が担当した老人の孤独死事件には、不合理な点がいくつも見つかる。そして暗い路地で一軒の照明店が深夜に店を開け、サングラスをかけた店主(チュ・ジフン)が時折訪れる客を待っている。第4話までは、土砂降りの夜、暗くぬれた路地、正体不明の人影、髪の長いうつろな目をした女、「犬の声がうるさい」「寒い」とわめき散らす男などなど、いかにもホラー的な要素をちりばめた断片的なエピソードがパッチワークのように並べられ、恐ろしくも先が気になるストーリーが重層的に進んでいく。 とにかく不思議なことばかり。スーツケースの女は指の内側に爪が付いている。いつも全身から水がポタポタしたたっている男が路地をうろついている。照明店の店主はヒョンジュに「普通じゃない人が紛れている。奇妙な人に注意して、気づかないふりをしろ」と不可解な忠告をする。その店主も、入ってきた客に「何の用ですか?」と声をかける。「いらっしゃい」ではなく。あちこちと場面が飛んでめまぐるしいが、そのどれもが気になって仕方ない。第3話まで一向に進む方向が見えず、謎は深まるばかりなのだ。