和田秀樹「日本人はインプットばかり。アウトプットで脳を活性化すべき」【オリックス宮内対談②】
『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。宮内義彦対談の2回目。 【写真】和田秀樹×宮内義彦、対談の様子
相談に乗ることは脳によい
和田 宮内さん、今では「頼まれ仕事しかしない」と仰いましたが、経営者からの相談なども多いのですか? 宮内 はい。若い経営者が「相談に乗ってほしい」と、よくここにも来ますよ。 和田 それは素晴らしいですね。老化してる暇がない。 宮内 それぞれ抱えている問題や事情が違いますし、経営には「こうしたらいい」という正解はありません。まず話をよく聴くことから始めます。ですので、なかなか大変です。 和田 でしょうね。以前、東大名誉教授の畑村洋太郎先生と話した時のことを思い出しました。「失敗学」で有名な方ですが、畑村先生が仰るには「日本では相談役が”お飾り的な名誉職”になってるけど”本当に相談に乗ってあげる相談役”をつくったらどうか」と。 宮内 なるほど。先達の話から学ぼうという謙虚さのある人は伸びますね。 和田 定年退職した人などが、若手や中堅の相談に気軽に乗ってあげる。畑村先生は失敗学の観点から、そういう人の必要性を説かれたわけです。 宮内 仰る通りですね。やはり経験というのは“生きた知恵”ですからね。それを教えてもらうのは大きなメリットだと思います。私も今になって「こうしたらいい」とか「こうしたらあかん」などと思うことがありますが、それは結局、失敗から悟ったことが多い。コストがものすごいかかってるわけですよ(笑)。
和田 「相談に乗る」ということは「自分がお金をかけてやってきた経験を伝える」ということでもあるんですね。 宮内 そうです。失敗した経験を教えてもらえれば、同じ過ちを犯さないで済む。だから知ったほうが得だと思いますね。 和田 むしろ聞かないのは大損ですよね(笑)。もちろん”相談に乗る側”の宮内さんにもメリットはあります。 宮内 ほう。それは? 和田 頭の中が整理されるんです。アウトプットすることで脳は活性化しますから。 宮内 確かに経験を話すことは脳のアウトプットですね。 和田 日本人はアウトプットが弱い。とくに年を取ると、インプットばかりして、アウトプットは疎かになるんです。どんなに知識を放り込んでも、使わなければ意味がありません。同じく、どんなに素晴らしい経験があっても、頭の中に留めておいたら宝の持ち腐れです。 宮内 仰る通りです。私はまだこの年になっても好奇心が強いのか、インプットするのが好きなのですが、アウトプットも同時に機会が多くあり幸いです。 和田 大ベストセラー『思考の整理学』を書かれた外山滋比古さんと対談した時に「年を取ったら勉強なんかしちゃダメだ」と言っていたのが印象的です。外山さん自身もインプット型の勉強はやめ、仲間と週に3回ほど「生産性を求めない話」をしていたそうです。それはそれで知的なんですけど。 宮内 相手に合わせて楽しく話すのは頭を使いますからね。 和田 はい。一番いいのは、ネット検索では出てこないような独自の知識を持ちながら、相手に合わせて、臨機応変にアウトプットすることだと思います。宮内さんがやられてる相談は、まさにそれ。脳の若さを保つにはとてもいいのです。 宮内 若い経営者などと話すと「こんなことも知らなかったのか」と思う時があります。それでは会社経営はうまくいかんだろうと。話をしていくなかで、そういったことに気づいてもらえると、やはりうれしいものです。 和田 教えてもらった人は、すごくありがたいでしょうね。一方で宮内さんは、教え甲斐もあり、若さも保てる。ウィン・ウィンの関係ですね。 宮内 やっぱり、わかってもらうというのはなかなか難しいことでしてね。 和田 そうでしょうね。 宮内 考え方をしっかり伝えてわかってもらうまでには、信頼関係も必要ですから。最近の若い経営者は非常に勉強というかな、学ぼうという人が多くなってきて、私はいいことだと思うんですね。教える内容は、ほとんど失敗したことばかりですけど(笑)。