9・30那須川天心vs堀口恭司のスーパーファイトはなぜ実現したのか
重大発表と予告されていた総合格闘技「RIZIN.13」(9月30日・さいたまスーパーアリーナ)のカード発表が24日、都内のホテルで行われ、キックボクシングルールのワンマッチで、無敗の天才キックボクサー、那須川天心(20、TARGET/Cygames)と、元UFCファイターの“逆輸入”総合格闘家、堀口恭司(27、アメリカン・トップチーム)のビッグカードが組まれた。まだ正式ルールは決定していないが、58キロ契約で、ボクシンググローブ着用の予定。当初、3分3ラウンドの予定だったが、会見で、堀口が15分1本勝負を求め、天心が、その要求を呑むなど、実行委員長の榊原信行氏が「ルールも含めて、まったく展開が読めない不思議な戦いになるだろう」と波乱を予想。キックルール採用で、那須川有利になることは間違いないが、RIZINは、いきなり最高のカードを切ってきた。 またアンダーカードでは、元K-1王者の大雅(22、TRY HARD GYM)が初登場し、キックルールで原口健飛(20、KickLab/聖武会館)と対戦する。この日は、正式発表されなかったが、大相撲のエジプト出身の元幕内力士、大砂嵐が総合格闘家デビューする予定で対戦相手にボブ・サップが候補に挙がっている。
今現在の日本格闘界における究極のスーパーファイトが実現する。 神童、史上最強の天才キックボクサーと称され、本場ムエタイ王者にも勝った那須川天心と、総合で世界最高峰の舞台であるUFCでタイトル挑戦経験のある“逆輸入”総合格闘家(MMAファイター)の堀口というルール上、相容れないはずの両雄が同じリングに上がることになったのだ。 実は、大会主催者側は、当初、世界の強豪8人を集めたRIZINキックトーナメントを開催し、この9月は、その1回戦を行い、準決勝、決勝を大晦日にもってこようと考えていた。MMAファイターの堀口は、空手出身とはいえ、ボクシンググローブで戦った経験も、キックルールでの試合経験もない。「肩ならしではないが、まずは、そこで慣れてから大晦日に天心と対戦すれば」(榊原信行・実行委員長)と、算段を立てていたが、堀口が、いきなりワンマッチでの対戦を要望した。 高田延彦・統括本部長が、その裏事情を明かす。 「堀口選手から、トーナメントではなくても、やるなら9月に一発勝負でいいんじゃないか。準備ができていますからやれますよ、という話が出た。これには驚いた。那須川選手も、非常に気持ちよく快諾してくれた。予定していたトーナメントが吹っ飛んだ」 主催者サイドのキックトーナメント構想を聞かされた堀口が、「こういう試合は早ければ早いほどいい。みんなが見たいカードをやれば日本が盛り上がる」と、いきなりのワンマッチ対決の要望を出した。 その意気込みを汲んだ主催者サイドが、那須川に打診したところ、こちらも「旬のうちにこういうカードをやらないと盛り上がらない。そうでないと意味が無いと思う」と快諾。異例のキックvsMMAの頂上対決が、前ふりなしで実現することになったのである。 高田本部長も興奮気味に「堀口選手、那須川天心選手の勇気に感謝。RIZINは、2015年から背水の陣でやってきた。毎回、いま懐にある一番のカードを旬のうちに出してファンの皆さんに見てもらいたいというコンセプトは変わらない。そして、その戦いに何の意味があるのか、が重要。勝負論、ドラマ性のすべてがぎゅっと凝縮した最高のカードです。私もファンも1週間前から眠れないかも」と語った。 会見に出席した堀口が先に「このカードに一番ワクワクしているのは自分。那須川君となら面白い試合ができる」と発言すれば、那須川も、「興奮している。日本、世界が見たいカード。堀口さんを尊敬していて、いつかやれたらなと思っていた。決まって嬉しい。必ずKOして日本の格闘界を盛り上げたい。MMAとキックボクシングの戦いで、キックボクシングを背負って戦いたい」と応じた。 だが、ボクシンググローブを使ったキックルールとなると那須川有利のフィールドとなる。那須川は、RIZINのリングで、MMAにも4試合挑戦して全勝、総合格闘家でもある才賀紀左衛門とはMIXルールで対戦して左のカウンター一発で沈めたこともあるが、今回、堀口は、あえて那須川有利とも思えるフィールドで戦うことを決意した。それでも「15分一本勝負的な完全決着なルールがいい」と、少しでもMMAルールに近づくようにラウンド制の撤廃を提案。 「理想はMMAでやりたいのだが、そうなると相手もあることなので難しい。そこは話し合って決めようかと思っている。そんなに(深くは)考えていないが」と続けた。 那須川も「15分?いいんじゃないですか。(ルールは)なんでも問題ないです」と、その提案を呑むことを会見で明言した。