還暦前に終活を。荷物を減らし住まいを小さく、VIO脱毛も始めた栄子さん。老後は「お金がないなら、身の丈に合った暮らしを」
◆老後の備え 今の職場の定年は60歳。栄子さんは今年で定年です。同業の中では待遇は良い方で、62歳までは今と同じ給与で働き続けられます。ただ、62歳を過ぎたら給与が半額になります。今は月4回の夜勤に手当が付くため、そこそこの手取りですが、今後は夜勤やシフト勤務は体がきつくなるでしょう。 なので、あと2年働いて、給与が下がるタイミングで退職し、その後は日勤のパートに変わりたいと、栄子さんは企図しています。高齢化社会ゆえ幸い、介護士の需要は高く、自宅近くの病院でもパートで介護福祉士を募集していました。 フルタイムではなく、無理のない範囲で。週に数日のパートで、細々と現役で働いて、なるべく無駄遣いをせず、いまの部屋で、小さく満ち足りて老後を暮らしていきたいと、栄子さんは考えています。 「お金がないなら、ないなりの生活をすればいいのよ。死なない程度に、その時々で生きて行かれればいいわ」 話は逸れますが、「老後の備え」でいうと、栄子さんはすでに「VIOライン」の永久脱毛を始めたそうです。ええー? 脱毛ですか? 介護の現場で下の世話をしていると、脱毛の必要性を痛感するとか。高齢者のおむつ交換で何が大変かといえば、陰毛についた汚物の処理だそうです。 「きったなくて。毛についちゃうと、取れないから」。取り切れないと匂いも残るし不衛生です。体毛の濃さは人により、年を取るとみな薄くなるのでなく、高齢でも濃い人もいるそう。そういう人は拭くのが大変なので、介護現場の人たちの間では、「要介護になる前の、VIOラインの永久脱毛」が流行っている、と栄子さんは言います。 「みんな脱毛してる。あたしも、もうやった」。5万円ほど払って施術を受けました。完全に脱毛するには、あと5万円分くらいかかりそうで、栄子さんは近々、再度、クリニックに行く予定だそうです。
◆「遺贈しようと思ってます」 母亡き後も、実家には兄が住んでいます。「ほんとはマンションを買わなくても、実家に住めば良かったんでしょうけど……」。でも栄子さんの一人暮らし歴はすでに40年近く。「たとえ兄でも、今更、ひとと一緒には住めない!」。実家の処分はいずれ兄がするでしょうが、お墓は、栄子さんが墓じまいをするつもりです。 本家の墓は車で2時間以上かかる場所にあるため、父が、自分たち4人家族用の墓を近くに作りました。いまは父と母が眠っています。いずれ兄も入るでしょう。栄子さんは兄を見送った後で墓じまいをして、自分は散骨してもらいたい、と考えています。 お墓の始末まで考えている栄子さんですから、もしかしたら、「老後の家」、最期まで住める「終の住処」の、自分が死んだ後の処分についても、考えてますか? 「遺贈しようと思ってます」と栄子さんは即答しました。びっくり! なんと、遺贈とは!! 遺贈は、死後に財産を寄付することです。「NGOが遺贈を受け付けてくれるようになったので」と、栄子さん。惜しげもなく、他人さまに差しあげてしまうのですね! なんて人間が出来ているのでしょう! もう自分は結婚もしないし、子どもも持つこともないだろう、と悟った40歳の頃、栄子さんは国際NGOへの寄付を始めました。以来、この20年ほど、毎月3000円の寄付をずっと続けて来ました。寄付先は「プラン・インターナショナル・ジャパン」。紛争や貧困などで厳しい状況にある海外の子どもを支援するNGOです。 栄子さんは、アフリカや紛争地帯の子どもたちの「里親(フォスターペアレント)」になってきました。「フォスターチルドレン」から手紙が来るなどの交流もあります。残念ながら、途中で生死不明になったり、病気で亡くなったりした子もいましたが、栄子さんは止めませんでした。 そのNGOが最近、遺贈を受け付け始めたと聞いたのです。もしもの時は、自宅マンションはこのNGOに遺贈するように手続きをしたい、と栄子さんは言います。