富裕層の憂鬱(ゆううつ) タワマン節税はどうなる?
“タワーマンション(タワマン)の売れ行きが好調”と聞くと、「高額なマンションを誰が買うの?」と素朴な疑問が浮かびます。 パワーカップルとよばれる共働き世代でしょうか? それともシニア層? では、富裕層が行っていた“タワマン節税”はどうなったのでしょうか。本記事で見ていきましょう。
不動産を使った相続税対策の効果
「都心の高層マンションは高嶺の花」と思いきや、販売即完売などの景気のよい話が聞こえてきます。人気の高さゆえに、中古物件も値上がっているので、現在は資産価値が下がることなく人気に拍車がかかっているようです。 かつて、このタワマンを利用した相続税対策が注目を集めました。まずは相続税についての基本を押さえます。 例えば、父親が亡くなった場合の相続を考えます。母親はすでに他界していて、子どもは息子1人です。被相続人は父親で、相続人は息子だけです。この場合の相続対策は、遺産分割についてではなく、相続税対策(節税と納税)に主眼を置くことになります。父親の財産は1億円とします。 (1) 全額を現金で保有している場合の相続税額 相続人は1人なので基礎控除額は3000+600×1(相続人の数) 課税評価額=1億円-(3000+600×1)=6400万円です。
<図表1> 相続税の税額速算表にあてはめると、6400×30%-700=1220万円 納税すべき相続税額は、1220万円です。 相続人が配偶者の場合は、税額軽減の措置(配偶者が受け取る遺産が、法定相続分または1億6000万円までなら相続税がかからない)があります。少子化が進んでいますので、事例のように「相続人は子ども1人」の場合も今後は多く想定されます。 (2) 相続税の節税対策において、現金を不動産に組み替えることで相続財産の課税評価額を圧縮する手法は以前からありました。理由は、不動産の相続税評価額の計算方法にあります。 土地部分は路線価(路線価がない場合は倍率方式)から、建物部分は固定資産税評価額から計算します。路線価も固定資産税評価額も実際の市場価格よりも低くなります。自宅の場合は、名義人の父が亡くなっても家族が住み続けることが前提なので、この計算方法となっていると考えられます。 先の事例で、父親の資産1億円で不動産を購入します。その不動産の相続税評価額が6400万円なら、基礎控除額の範囲内なので相続税額はゼロになります。 7000万円であっても、速算表にあてはめると(7000万円-6400万円)×10%=60万円です。相続税も累進課税なので、富裕層にとって不動産を利用することによる節税効果は大きいです。