富裕層の憂鬱(ゆううつ) タワマン節税はどうなる?
タワマン節税にメスが入ってどうなった?
不動産を利用した節税のなかでも、話題を集めたのは「タワマン節税」でした。タワマンには特殊な事情があります。 不動産の相続税評価の基礎になるのは、路線価(土地)と固定資産税評価額(建物)です。都心の土地評価が高額であることは間違いないのですが、タワマンは戸数が多いので持ち分としては、かなり少なくなります。 実際に、住民から「意外と固定資産税が安い」と聞いたことがあります。市場価格としては、低層階に比べて高層階が高額です。 同じマンション内で市場価格に差があるので、相続税の評価額も階層別に差別化すべきということで、2018年に評価額の計算式:1階の評価額+0.25%×(階数-1)が導入されました。ですが、さらに2024年1月から新ルールに変更が決まりました。 国税庁は、マンションの相続税評価額が市場価格と乖離(かいり)するには、(1) 築年数 (2) 総階数 (3) 所在階 (4) 敷地持分狭小度の4つの要因があるとし、それらを指数化したもので評価することになりました。 これはタワマンだけでなく、2024年1月1日以降の相続、遺贈、贈与によって取得したすべての「居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)に適用されます。 計算方法は少々複雑です。国税庁ホームページ(※1)に計算事例が掲載されていますので、ご参照ください。実際に書類を申請する場合には、計算ツールを備えた明細書も用意されていますので、複雑さは軽減されます(※2)。 そもそもは相続税評価額と市場価格が乖離していることを解消するのが目的です。概要は下記のようになります。 1. 相続税評価額が市場価格理論値の60%未満となっているものについて60%になるように補正する 2. 評価水準(=相続税評価額/市場価格)が60~100%は補正しない 3. 評価水準が100%超のものは100%になるように評価額を減額する 乖離が少ない場合は今までどおりなので、やはりタワマン節税にメスが入ったということでしょうか。富裕層の節税対策、新しい模索が続きそうです。 出典 国税庁 No.4155 相続税の税率 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減 国税庁 マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について (※1)国税庁 「住居用の区分所有財産」の評価が変わりました (※2)国税庁 B2-6 居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書 執筆者:宮﨑真紀子 ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
ファイナンシャルフィールド編集部