夏の甲子園で輝いた好投手を山本昌が解説 「こんなにすばらしいピッチャーがいたのか」と絶賛したのは?
高尾響(広陵/172cm・73kg/右投右打) 投げるセンスにかけては今大会でナンバーワンの投手でしょう。身長172センチと上背はありませんが、腕の振りがよく勝負どころでの球の走りは一級品。マウンドでのたたずまいもただ者ではありません。大舞台での実戦経験が豊富だからか、場面に応じて投球を変えられるセンスがずば抜けていました。プロに行ったら、高校生投手で最初に出てくるのは彼かもしれません。これからは体を強くして、腕の振りがもう一段鋭くなってくれば楽しみです。スピードが上がって、より勝てる投手になるでしょう。
坂井遼(関東一/178cm・78kg/右投右打) 絶対的なリリーフとして決勝進出に導いた活躍ぶりは見事でした。たくましい体と鋭い腕の振り、最速151キロを計測した力強いストレートは目を引きました。悪いカウントからでも半速球で簡単にストライクがとれる器用さも印象的で、決してパワーだけの投手ではないと伝わってきました。少し気になったのは、軸足(右足)の使い方。ヒザを真下に折ってから体重移動をしていたのですが、力をロスしているように見えました。体重移動するなかで自然とヒザが折れる形にできれば、今まで以上に腕が振れるようになるはずです。
田崎颯士(興南/177cm・61kg/左投左打) まず「こんなにすばらしい投手がいたのか......」と率直に驚きました。「投手らしい投手」という印象の体つきと腕の振り。左肩を大きく回してテイクバックを大きくとり、左腕をしならせる使い方は、僕の好みです(笑)。将来は先発投手として大きく羽ばたいてほしいですね。まだまだ線が細いので、これから体が仕上がってくれば技術的にもっと伸びるはずです。今は体重移動時に上体が前屈みになって、「く」の字の形になっています。上体が真っすぐに立って移動できるようになれば、もっと左腕が振れるようになりそうです。大学進学予定とのことですが、これからも注目していきます。
上原堆我(花咲徳栄/178cm・84kg/右投右打) 140キロ台のストレートは見るからに力があって、スピード感もあります。体つきもしっかりしているし、伸びしろのある素材だと感じました。少し左肩の開きの早さは気になるところですが、変にシュート回転が強くなるわけでもないので本人に合っているのかもしれません。個人的にはもう少しホームベースに向かって真っすぐに左肩が寄っていって、左肩と右肩を入れ替えるように腕が振れると、もっと力強いボールが投げられるのではと感じます。変化球のキレもよくなるはずなので、よかったら修正してみてほしいですね。 後編につづく>>
菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro