年末年始、高齢の親を持つ子世代が行いたいこと、行わないほうがいいこと~『親不孝介護』の著者に聞く・後篇~
親の希望を確認・尊重する
こうしたチェックを行うと(もしくは行わなくても)、子世代としては親に関してなんらかの対策を取りたくなるかもしれない。 たとえば、親の住む部屋や家が散らかっていたら、掃除をするだけでなく、整理整頓したくなったり、親に物忘れの兆候が感じられたら、「脳トレ」をしてもらおうとしたり。人によっては、「今日の日付」や、「過去の出来事の記憶」をまるでテストのように繰り返し質問し、詰問のようになってしまう……なんて場合もあるだろう。 が、「良かれと思って行うこうした子世代の行動が、親にとってストレスになる場合がある」と川内さんは注意を促す。 「親御さんが認知症にならないようにと、様々な対策を取りたくなる方もいらっしゃると思います。が、親御さんがストレスになるようなことを行うと、逆に認知症リスクを高める恐れがあります。 左図は私が使っている資料ですが、認知症は、認知機能の低下とストレスの掛け合わせで発現すると言われています。つまり認知機能が低下したとしても、ストレスが少なければ、日常生活を問題なく送れる場合があるのです。 また、逆にストレスが大きいと、認知機能の低下がさほど大きくなくても、日常生活が困難になってしまいかねない。そういう意味でも、子世代は親御さんの気持ちを第一に考えて、穏やかに見守ることができる距離感を持っていただくのも大事です」(川内さん)
そのままの親を受け入れる
実は、私の周囲では、「実家の掃除をしたい」「片づけたい」という声はとても多い。しかし、「掃除をしても、また元に戻った」「迷惑がられた」「使いづらくなったと不評だ」などの声も同じくらい多いのだ。 山中さんも、親の部屋の様子が気になりだした当初には、「ガンガン整理整頓した」そうだ。しかしこちらに関しては、「川内さんに『本人が居心地がいいなら、それを大事にすべきだ』と諭されました。きれいにしたぞという自己満足のためにやっていたと思います」と、今では反省しているとか。 「休暇を取って帰省までして部屋をきれいにしたのに、部屋はすぐ元に戻ってしまいました。頑張っても意外に本人は喜ばないし、不衛生でない限りは鷹揚に構えないと、自分がまいってしまいます」と、山中さん。 川内さんは、こう説明してくれた。 「親御さんがその状態で気持ちよく暮らせているのなら、それを変えるのは子世代のわがままなのかもしれませんよ。親にはいつでも、またいつまでも立派であってほしいという気持ちになってしまうものですが、そうなると、片づけたいというのは、立派であってほしいという子世代の単なるエゴかもしれません。親御さんの素の性格やキャラクターは、子供に見せてきていたものとは違うものなのかもしれません。ですから、親御さんの『本来の姿』を受け入れる度量を持つことも、子世代に求められる介護準備の一つと言えるかもしれません」