実は年々売上が減少している「養命酒」。「アルコール離れ」「酒税法改正」よりも大きい、ずっと抱えてきた“課題”とは?
もちろん、現代の科学技術をもってすれば、改良は不可能ではないかもしれない。けれど医薬品のため、商品化するには何年もの臨床試験が必要となってしまう。 バブル崩壊以後の、市場環境の変化も追い打ちをかけた。青汁、お酢、酵素など、養命酒同様に「日頃の健康維持のために摂る」競合商品が一気に増加したのだ。 さらには、2017年6月の酒税法改正により、安売りが規制され、店頭での販売価格が上昇する状況に。それまで養命酒は、店によって価格差が大きく、特売時に売り上げが伸びる傾向があった。だが、その機会も失われてしまった。
これらの要因が重なり、養命酒の売り上げは1990年代から低下の一途を辿っている。2025年3月期の第2四半期決算短信を見ても、売り上げは前年同期比4.2%減の47億1,000万円、営業利益は前年同期比53.9%減の7,100万円。 年間数十億円稼ぐ商品なので、現時点でも、十二分にすごいのは間違いない。とは言え、長年にわたって安定した業績を誇っていた看板商品は、ゆっくりと、確実に沈んでいる状況なのだ。
■新規事業へ挑戦も、強すぎるブランド力が足かせに この危機的状況を受けて、養命酒製造は「ファン層を拡大し、イメージを高める」取り組みを開始する。 その第一歩が、2005年の「養命酒健康の森」の開業だった。長野県にある駒ヶ根工場を見学に訪れた人への付加価値として、工場の建つ森の中に、カフェとショップを造ったのだ。 カフェでは、養命酒との親和性を意識し、和漢素材(漢方や生薬に使われる素材)を使ったお茶やスイーツを提供。ショップでも養命酒を中心に、「養命酒ブランド」として流通させていた食品やサプリを販売した。
同時に、売り上げが減少した養命酒に代わる主力商品を目指して、商品開発も積極的に行った。和漢素材を使ったリキュール、のど飴など、健康に寄与する食品を次々と考案。いずれもオリジナリティが高く、健康志向のユーザーを一定数は獲得できたという。 けれど、これらの商品は、市場で大きな反響を呼ぶまでには至らなかった。その最大の敗因は、養命酒が持つイメージの二面性だ。「身体にいい」「安心な商品である」という信頼感は、長く愛される商品だからこその財産であり強みだ。