セールスフォースベースの「クラウドERP」新勢力は奏功するか
潜在市場のクラウドERP、課題はセールス力か 注目点の3つ目は、推進組織としてコンソーシアムの形態をとったことだ。 ERP Cloud 360 コンソーシアムは図3に示すように、テラスカイ、シナプスイノベーション、チームスピリットの3社を理事会員、セールフォース・ジャパンを特別賛助会員として、現在合計20社のパートナー会員と共にスタートし、今後パートナー会員を増やしていく計画だ。すなわち、コンソーシアムとしてエコシステムを拡大していこうという取り組みだ。これもSalesforceベースというブランドを最大限活用した施策といえるだろう。 一方、懸念される点を一つ挙げると、「誰が一生懸命売るのか」ということだ。 セールスについては、おそらく理事の3社が主体となり、図3に記されているように仕入れ販売を行うプレミアムパートナーを増やしていく形で進めていくのだろうが、理事の3社はそれぞれに、これまでと同様に自社製品も売っていかなければならないので、ERP Cloud 360に注力するのは難しいのではないか。プレミアムパートナーについてもセールス力は未知数だ。 会見の説明を聞いてそう感じたので、質疑応答で上記の疑問をそのままぶつけてみたところ、「まずは理事の3社がそれぞれに体制を整備してセールス活動に力を入れていく。私たちとしてはERP Cloud 360という新たな商材を持つことで、お客さまのご要望に一層広くお応えできるようになり、セールス活動自体が活発になると考えている」(道下氏)とのことだった。 もし、セールス活動が思惑通り進まないようならば、非営利法人の同コンソーシアムとは別に共同出資によってERP Cloud 360を専任で売る営利法人を設けて注力すればどうか。それくらいのセールスパワーが必要な気がする。 業務アプリケーションのクラウドサービスであるSaaSの日本企業での普及率は、現在3割程度とも言われており、その中でもクラウドERPに至ってはまだ1割程度との見方もある。対象とする企業規模をどう捉えるかでこの割合は変わってくるが、いずれにしてもまだまだポテンシャルは大きい。その意味でもERP Cloud 360の今後の普及の動きに注目していきたい。