「農福連携」で収量増、出荷も安定 農家と事業所を橋渡し
千葉県のJA長生は、農福連携事業に取り組み、地域とのつながりを強化している。近隣の九つの福祉事業所と連携してネギ・タマネギ農家ら約10人の生産者が同事業を利用して、収穫や出荷調製作業をしている。管内では、規模拡大を図る上で労働力確保が高いハードルになっているため、同事業に期待する声が高まっている。 JA管内では、農業者の減少や休耕地の増加による生産量の減少、生産額の低下など大きな課題を抱えている。担い手の規模拡大と新規就農者の経営発展が、これらの課題解決に有効とされる。中でも農福連携事業は、労働力確保に向けた対策の一つとして取り組みを始めた。今年で4年目を迎えた。 白子町でタマネギと葉タマネギを生産する仲田吉範さん(50)は、船橋市出身の就農7年目。夫婦で農業を営んでいる。機械化などで少しずつ規模拡大してきたが、作業の負担が大きい時期もあることから、雇用を考えていたところJA担当者から紹介を受け、同事業を導入した。仲田さんは農福連携事業が始まった当初から利用しており、栽培面積は倍以上に増えた。収量の増加と安定出荷にもつなげている。
生きがいづくりの場に
仲田さんは「福祉作業所の利用者は、想像以上に丁寧で正確に作業をしてくれる。労働力の確保が難しい中で、作業に取り組んでくれ、とても助けられている」と感謝する。 作業に参加している福祉事業所からも支持されている。「利用者が外での作業を楽しく感じてくれていることが一番うれしい」「気分転換になり、やりがいを感じている」という声があり、農業を通じて就労の機会や生きがいづくりの場になっている。近隣の事業所と連携することで、地域での関係づくりの強化、地元農業への関心が高まるなど、さまざまな利点がある。 JA管内の新規就農者の中には移住者も多く、地域住民との関わりが薄いことから自身で雇用者を探すのは難しい面もある。そこでJAでは、「同じ地域で生活をする住民として、障害者と一緒になって地域を支えていく」という意識の下、新規就農者を主な対象として農福連携を利用した労働力不足解消を提案している。 JAでは、地域とのつながり、新規就農者への支援を継続するとともに、今後取り扱う作物を増やし、一層の農福連携事業の拡大を目指す。
日本農業新聞