日米の金融政策決定会合が今週開催。米利下げ濃厚。日本は利上げ見送り可能性も、1月には実施見込み。イベント後は不透明感後退し、年末ラリーに期待か
●当面の株価の方向性を決める最も重要なポイントが「金利動向」である 当面の株価の方向性を決める最も重要な要素は何か? この質問を、皆さんに今一度してみたいと思う。個人投資家に訊ねるとたいていの場合は「景気動向」や「企業の利益成長力」という答えが返ってくる。もちろん大事な要素だとは思うが残念ながら正解とは言いづらい。 「どうして景気がいいのに株式市場は下げているのですか? 」 「成長株に投資しているのに株価がどんどん下がり、含み損が増えて辛いです」 こうした感想を持ったり経験をしたりする方は多いと思う。正解は金利動向だ。金利の方向性が株式市場に大きな影響を与えており、時に好景気や企業業績の好調さを吹っ飛ばすほどの威力がある。株式投資を行う個人投資家にとって、金利と株式の関係を理解しておくことは基本中の基本である。こうした重要ポイントを理解せずに株式投資を行っている人があまりにも多いことに今更ながら驚かされる。SNS上で悲鳴に似た投稿を連日目にするが「好条件が揃っているのに株価は下落する」という理不尽な状況が続けば精神的にかなりきついのではないか、と思う。昨今の株式市場の動きは日々の金利動向がダイレクトな決定権を持っており、それに振り回されている格好だ。 ●日米の金融会合が今週開催。FRBは0.25%利下げ濃厚、日銀は見送りか? 金利の方向性を決めるのが中央銀行の政策金利だ。米国では米連邦準備理事会(FRB)が、日本では日銀が政策金利を決定する。重要な判断となるため、中央銀行のメンバーたちが慎重に議論を重ねて、年に8回開かれる金融政策決定会合の場で決定する。その重要な決定が間もなくやって来る。FRBは日本時間の12月19日(木)未明、日銀は同日のお昼頃に発表する。まさにビッグイベントデーだ。マーケット予想ではFRBが0.25%利下げすることがほぼ100%の確率で、一方、日銀の0.25%の利上げは50%程度の確率で実施されるとの見方である。日銀は12月の利上げを見送ったとしても、1月に実施すると見られており時間の問題となっている。 日米で反対の方向に政策金利が動くのが興味深いところだが、米国の場合はコロナ禍におけるインフレ退治の目的で急速な利上げを行ってきたが、その役割を終えたが故の利下げであり、日本の場合はマイナス金利政策による景気浮揚効果を狙った状況から脱却し、ようやく金融正常化に一歩進み出すことができるようになったが故の利上げである。日米の金融政策が明らかとなり、重要イベントを通過すれば日本株にとっては不透明感の後退でプラス材料となる。皆さんもその行方を見守っていただきたいと思う。 ●次に、株式市場を理解するための2つ目のポイントが先物市場の動きだ そして、もう一つ昨今の株式市場を理解するための重要なポイントがある。それは先物市場の動きに多大な影響を受けていることだ。先物市場はご存知のように、日経225先物やTOPIX先物といった市場連動型の取引期限付き証拠金取引だが、先物売買のメインプレーヤーは海外短期筋、すなわちヘッジファンドたちである。 「12月第1週は師走相場入りと同時に日経平均株価は900円近く上昇し、4週ぶりに終値ベースで3万9000円台を回復。3万8000円~3万9000円のレベルは今年における最も取引の多い価格帯であるため、今の株価水準では利益確定売りや戻り待ちの売りが出やすくなります」 マーケット解説では一般的には上記のような説明が多いが、12月第2週は今年最後のメジャーSQ(特別清算指数)週となり、その行方に注目が集まった。そして月曜日から案の定、激しいSQバトルが展開された。前週までは買い方が優勢となっていたため、月曜日は寄付きからの40分間で売り方が一気に仕掛けてきた。10分足チャートを見ていただくと分かるが大きな陰線が4本出現。241円高の3万9332円で始まった9時00分05秒の寄付き天井から9時42分には3万8972円まで360円下落してこれが安値となった。もちろん裁定解消売りも伴っている。その後はじりじりと反発したことから、買い方優位の状況で月曜日の取引は終了した。 ●SQを巡りヘッジファンドが激しいバトル。買い方優勢で年末相場に期待? 火曜日も午前中にSQバトルが2度展開された。9時10分から9時30分と10時10分から10時30分の2回にわたって売り方が200円の値幅で売りを仕掛けたものの、結局は前日同様に買い方が押し切る形で制圧。そして「魔の水曜日」。寄付きから静かな出だしだったが、この日もまず売り方が10時20分頃から売り崩しに入り11時15分には安値3万9112円(255円安)まで下落。ところが、昼休み頃から買い方が徐々に力を発揮して終値3万9372円まで260円戻す展開となった。要するに、12月のSQ週はずっと買い方優勢での試合展開だった。 11月のマイナーSQでは3万9901円という「幻の高値」が出現。その後は一度もこの水準を上回れない弱い相場が続いていたが、12月の第2週に瞬間風速とはいえ、「幻の高値」を突破したことで明るいムードが広がっている。 金曜日のSQ値は3万9434円。日中の日経平均の安値は3万9247円、高値は3万9734円となり日中値幅内に収まる無難な清算日となった。一時は「幻の安値」の出現(相場の先行きが強いことを示唆)が期待されたが、さすがに売り方が慌てて阻止した格好だ。安値3万9247円を付けたのが午前11時10分だったが、その後買い方がジリジリと勢いを取り戻し引け値は3万9470円となった。安値から223円盛り返して翌週への期待を繋いだ。師走相場の後半は引き続き盛り上がりそうだ。 こうした解説を見て日々のマーケットを理解する力がないと、一体何が起きているのかよくわからない投資家になってしまう。皆さんは理解できているだろうか? ●2025年の初セミナーは1月9日開催。マーケット展望と投資戦略を解説! さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。 12月12日(木)に開催したWebセミナーのテーマは『好調な米国株vs軟調な日本株、現状の金融相場を点検する』。年末の節税対策の話も交えて非常に重要なセミナーとなった。投資戦略だけでなく、本コラムでは書けない個別銘柄についても詳しく解説。セミナー後半では皆さまからのすべてのご質問にお答えした。年末の多忙な時期にもかかわらず242名が参加し、2時間30分のロングランセミナーとなった。次回は2025年1月9日(木)20時より開催する。テーマは『2025年のマーケット展望と投資戦略』。新年を迎えてタイムリーなセミナーになると思う。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。 そして、動画によるスペシャル講義では『ポートフォリオ理論』に続いて、太田流『ポートフォリオ実践』がスタートしている。資産運用においてポートフォリオ運用のノウハウを知っておくことは必須であり、個人投資家に身に付けてもらうことを目的としている。最近はシステマティックリスク(株式市場全体のリスク)の講義を増やしており、「バブルの定義」「ヘッジファンドの実態」「恐怖指数の活用」「先物主導とは何か? 」「SQバトルとは? 」「裁定取引の影響」など個人投資家にとって知識が手薄になりがちな貴重なテーマの動画を続々とアップしている。資産運用を真剣にお考えの皆さま、「勝者のポートフォリオ」で一緒に大きく飛躍しましょう。ぜひ、ご参加をお待ちしております。 ●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
太田 忠
【関連記事】
- ■ 過去10年で日経平均は約2倍だが、バブルにあらず。利益成長すれば株価は上昇し、投資家は恩恵を享受。「億り人」への将来を思い描き、長期投資に励もう
- ■トランプ氏の関税強化投稿で貿易戦争の再燃を警戒。日銀の利上げ懸念もくすぶり、ドル円は150円割れ。配当金は8.1兆円も日本株の年末ラリーは期待薄か?
- ■金融相場にもかかわらず、ボックス圏推移の日本株。米株好調なのに日本市場が低迷する3つの理由とは?ただ来春には上抜けて日経平均の最高値更新を期待!
- ■米国が利下げ局面なのに長期金利が上昇する理由は、ランプ政策の輸入関税増を先取りしているからだ。日本株はその懸念で低迷中だが、反転の兆しを待て
- ■大統領選はトランプ氏が圧勝。公約から政策を点検。減税など市場に追い風も、関税増はインフレ再燃か。トリプルレッド実現すれば、株式市場に強い追い風