医学部入試でなぜ「面接」が必須なのか…医師・和田秀樹が告発「邪魔な人間を徹底排除する医療界の闇」
■子どもを「人質」に、親もコントロール下 教授たちに迎合することで無事に面接を突破した受験生たちが医学部生となり、やがては教授たちの思惑通り「共感脳」だけがやたらと高くて周りに合わせられる医者として育っていきます。 これでは古い常識がいつまでもまかり通り、進歩もしないし、変革も起こらないのは当たり前でしょう。 すべての医学部の入試に面接を課すことは、自分の子どもを医学部に入れたいと考える多くの医者の口を封じるうえでも有効です。 何せ入試の面接官は医学部の教授が務めるわけですから、彼らの機嫌を損ねるようなことをするのは、とても勇気のいることなのです。 親が今の医療や大学病院、あるいは医学部のあり方に異を唱えることが、子どもの医学部の合否に影響するなんて、そんな理不尽なことはあるはずないと考えるかもしれません。 でも、やろうと思えばそれが簡単にできてしまうのが入試面接というシステムの危うさなのです。 ■「和田秀樹の娘」だから合格できなかった? はっきりと数字として結果が出る学力テストの得点を操作すれば東京医科大学で起こった裏口入学事件のように不正がバレるリスクはありますが、面接なら「医者としての適性がない」という「正当な」理由をつけられます。 実際にそのようなケースがあったかどうかは別として、我が子を自分と同じように医学の道に進ませたいと考える親にとっては、その可能性があるというだけでも十分な脅威です。 これはもう子どもを人質にした恐ろしい言論封殺システムだと言ってもよいのではないでしょうか。 会って話をしてみると、「大学病院での臓器別診療は問題だらけだ」というふうに、私と同じような考えを持つ医者も実は多いのだなと感じるのですが、それを公の場で口にしようとする人がなかなかいないのは、この無言の圧力がうまく働いているせいかもしれません。 私の娘は、2018年に東京大学を卒業後に医者になりたいと考えるようになり、複数の医学部を受験しましたが、1校(そこがいちばん偏差値が高く、その学校では上位5番以内の特待生になりました)を除いてすべて補欠の扱いでした。 実はあれも、年齢や性別による差別というより、先述した通りこうやって今の医療界に蔓延る問題に声を上げることを決してやめない和田秀樹の娘であることを面接官の誰かが知っていて、それが理由になった可能性もあるのではないかと私は疑っています。 ---------- 和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。 ----------
精神科医 和田 秀樹