元ロンドン五輪副会長が「東京五輪開催の可能性は低い。大会組織委員会は中止計画を持っているはず」と注目発言
新型コロナの止まらぬ感染拡大の猛威の影響を受けて開催の是非が問題となっている東京五輪について、2012年ロンドン五輪の元最高責任者の一人、キース・ミルズ氏が英国BBCラジオのインタビューに答えて「開催する可能性は低い。東京の組織委員会は中止の計画を用意しているはずだ」と注目発言を行った。先だってニューヨークタイムズやブルームバーグなどの米メディアが中止の可能性について報道。IOCの元副会長で名誉委員のケバン・ゴスパー氏が、国連に開催可否の判断を委ねる可能性について言及するなど、ここにきて悲観論が加速しているが、ついに英国の五輪関係者から実名で声があがった。 ロンドン五輪の組織委員会で副会長を務めていたミルズ氏は、BBCのラジオ番組内で「ワクチンが我々の望む以上に早く行きわたり、最後の最後で状況が劇的に改善するケースは残っていると思う。だが、それは難しいだろう。個人的には現時点の南米、北米、アフリカ、欧州の世界中のパンデミックを見てみると(開催の)可能性は低いように見える」と、ワクチンの普及と効果が遅いことを理由に中止論が出始めている東京五輪の開催に否定的な意見を述べた。 さらに「もし(私が)東京で組織委員会に身を置いているのであれば中止の計画を用意するだろうし、間違いなく彼らは中止計画を持っていると思う。あと1か月か、そのあたりで決断の必要があるだろう」と経験から基づく推測と自らの考えを伝えた。ミルズ氏は2月下旬を開催の可否を決定するデッドラインだと指摘した。 またミルズ氏は、「これは東京だけの感染ではなく、競技に参加するすべての国に関わる問題だ。十分な競技参加者と国が東京を訪れ、本当に大会開催が実行できるのか」と、まだ43パーセントしか各国の五輪代表が決定していないという現状をも問題視。「我々はパラリンピックを忘れるべきではない。競技者の多くは健康障害を抱えているため、世界中を飛んで競技することは、彼らにとって課題となるだろう」との懸念をも口にしている。 ミルズ氏は東京五輪の中止を「惨事」と表現。「中止となれば。数百の各国オリンピック委員会やスポーツ連盟に財務面で大きな影響を及ぼすことになるだろう」と、中止になった場合の経済打撃についても言及した。 英国のインディペンデント紙によると、アテネ五輪の競泳200mバタフライで銅メダルを獲得した英国の元スター選手、ステファン・パリー氏もミルズ氏の主張に賛同。 「この状況は五輪へ向けて準備を進める選手たちにとって極めて難しい。(開催是非を)明確にする必要性がある」と話したという。 ボート競技で4つの金メダルを獲得しているのマシュー・ピンセント氏は、先日、ツイッターで、東京五輪を2024年に延期し、2024年のパリ五輪、2028年のロス五輪をそれぞれ4年ずらせばどうかという提案をしたが、パリー氏は、「アスリートたちには競技サイクルがある」とし、大会がさらに大幅な延期となれば、選手の五輪出場計画が大きく狂うことを問題視している。 昨年もこういう声が出始めて世界的な世論が固まりIOCが重い腰を上げて1年の延期が決定した。世論調査で開催反対の声が高まる中、菅総理は、施政方針演説の中で「夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」と語るなど五輪開催への強い意志を示した。だが、日本にとって“最悪の流れ”に向かっていることは否定できないだろう。