住宅ローンで「元利均等返済」を選ぶと大損する…FPが断言「中古マンション購入でやってはいけないこと」
■銀行に融資の可能額を早めに聞いておく しかし、それでも手放しで喜ぶわけにはいきません。その利息は、永遠に払わなくてもいいというものではないからです。 5年ルールの場合は5年後には月々の返済額は増えますし、また、125%に抑えた分は、利息の支払いを後回しにして、先送りする設定になるからです。つまりローンの返済期間が長くなるということです。 中には、この5年ルールや125%ルールを設定していない銀行もあります。また、この5年ルールや125%ルールを適用できたとしても、一時的には困難を免れますが、支払い金額の増額は変わらないということを承知しておいてください。単純に返済を遅らせるというだけです。 多少でも余裕があるようならこれらを活用せず、できるだけ早めにローンを払ってしまうこと。そうすれば後々が楽になります。 先の30代夫婦は、銀行に赴き、どれくらいの金額までローンが借りられるのかを確認に行きました。マンションを探すにしても、いくらまでなら借りられるのかを決めなければ、実行に移せないからです。 今の家賃が10万円ほどなので、住宅ローンも元利均等返済で、今と同じ毎月10万円の返済と設定しました。そして、二人の年収から確認すると、3500万円まで借りても問題がないのではないかと銀行から返事が来ました。 このように、先に銀行に借り入れ可能な金額を確認してからマンションを選ぶと、万が一、融資の審査に落ちてもショックを受けることはなくなり、時間的にも効率がいいでしょう。目安は年収の5~6倍です。 ただし、銀行は多く借りさせることもありますので、借りすぎないように注意することです。 例えば、定年時には返済を終えるのが理想です。一般的には60~65歳までは年金もありませんので、この5年間は返済がないほうがいいです。 もしこの5年間に返済しなければならない場合は、この期間だけ返済額を減らすことも必要になるかもしれません。 ■銀行がすすめる「元利均等返済」はワナ さて、あれこれ悩みましたが、この夫婦はマンションを購入することにしたそうです。銀行では、住宅ローンの契約をする時に返済額が毎月一定の「元利均等返済」をすすめられたので、深く考えずに言われるがまま契約を終えました。 でも実は、毎月の返済額が一定になる「元利均等返済」を選ぶのは損なのです。多くの住宅ローン利用者が、この夫婦のように、知らないがゆえに損を招いていると言ってよいでしょう。 「元利均等返済」は、一見、毎月、同じ返済額なので計算が面倒でないし、一定額なので支払いも楽だと思うはずです。でもその内訳をみると、その返済額の中にある「元金」と「利息」の割合が変化していくのです。 例えば毎月の返済額が10万円だとしたら、そのうち、ある月までは5万円が利息で5万円が元本だったものが、しばらくすると7万円が利息で3万円が元本というふうになります。結果的に、総返済額は、毎月、返済額が変わる「元金均等返済」よりも多くなる仕組みになっているのです。 この「元金均等返済」というのは、先の夫婦が選んだ「元利均等返済」とは違い、毎月の返済額が変わるものです。 というのは、元金均等返済は元金を返済期間で均等に割り、残高に対して利息を計算する仕組みなので、毎月の返済額はどんどん減少していくのです。 元利均等返済より、当初の支払額が多くなるというデメリットもありますが、徐々に利息分が少なくなっていくので、支払い総額は少なくて済みます。最初のうちは大変ですが、頑張って当初の負担額さえ乗り越えれば、断然、こちらを選んだほうがお得なのです。 ---------- 柏木 理佳(かしわぎ・りか) 生活経済ジャーナリスト、FP(ファイナンシャルプランナー) 1968年、神奈川県生まれ。NPO法人マネー・キャリアカウンセラー協会代表にて、年金、保険、資産運用をアドバイス。豪州ボンド大学大学院にて経営学修士(MBA)を取得後、育児中に桜美林大学大学院で博士号取得。国土交通省有識者会議メンバー。豪州留学後、米国企業勤務、香港にて英国企業(現中国系)勤務、中国留学を経て、シンガポールにて会社設立に携わる。嘉悦大学、城西国際大学大学院などで准教授(経営戦略、マーケティング、人的資源、キャリア)を経て、現在は立教大学経済学部特任教授。 ----------
生活経済ジャーナリスト、FP(ファイナンシャルプランナー) 柏木 理佳