“知能が高い”から「タコ」を保護するのは差別的か? 欧米で進む「動物福祉」の背景にある思想
タコ以外の動物を放っておいてよいのか?
そもそも、知性や知能は「有る/無い」で線が引けるようなものではない。程度は異なれど、多くの動物が知性を持っている。ジャネット教授も「ブタやウシ、ニワトリなど大量生産される動物にも知性はある」と認めている。 しかし、ブタやニワトリとは異なり、タコの養殖については産業システムが未発達だ。「世界的な産業になる前に介入できる今こそが、またとないチャンスなんです」とジャネット教授はコメントしている。 この発想は「救うことが可能な対象だけでも救える」という点で現実的・合理的な一方で、すでに大量生産されている動物たちを“放っておく”ものであるようにも思えるが……。 伊勢田教授は「人間の認識は少しずつしか変わっていきません」と語る。 「認識が変わっていないなかで、急に既存の大規模産業を禁止しようとしても『理不尽な規制だ』としか思われず、反発や反目を生んで終わるだけだと思います。 今回のタコ養殖禁止の法律は、おそらく、タコや他の動物に対する人々の認識を少しだけ変えるでしょう。 また、EUで導入されているさまざまな規制も、EUや周辺における畜産業についての認識のあり方を少しずつ変えていると思います。 そうして認識が変わることが、今度は、次の段階の規制のための足場になっていくでしょう。 つまり、ブタやニワトリなどの家畜・家禽(かきん)たちも放っておかれているわけではありません。状況は急には変わらないため、継続的な取り組みが必要だということです」(伊勢田教授)
弁護士JP編集部