にしおかすみこさんの「認知症の母」との向き合い方。罪悪感はだれも幸せにならない
認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父との日々を、ユーモアいっぱいのエッセイ『ポンコツ一家』につづっている、にしおかすみこさん。今回は、にしおかさんに親との向き合い方を聞きました。
自分が壊れてきているのを認知症の母もわかっている
――コロナ禍に実家に帰ったら、ゴミ屋敷化していた。お母さまの様子もおかしくて、実家に戻られたそうですね。 にしおかすみこさん(以下、にしおか):コロナで仕事がなくなって貯金もなくなって。実家はどうしてるかな? と様子を見に行ったのがきっかけです。私が実家に帰ったところで、どうせなんともならないけど、それでもまぁ、いた方がいいんじゃない、ぐらいの感じで。決して覚悟をもって帰ったわけではないんです。 ――まずは家の片づけをされた。 にしおか:大量の生ゴミを捨てて、砂場になっていた床をふき掃除して。大げさではなく、本来の床の色が見えるまで3週間かかりました。 ――お母さまは「余計なことをするな!!」と片づけに抵抗されたとか。 にしおか:今振り返ると、実家に帰って私が苦労するのを心配して、怒鳴っていたんです。ただ、当時はそんなことわからないし、「なんで理不尽に怒られるんだ?」と思っていました。 ――怒りにも理由があるのですね。 にしおか:今もカーペットはときどき汚れるので、安いものを買ってダメになったら買い替えます。でも、それにもときどき、母は文句を言います。おそらく母は私の仕事がないと思っていて、実際、少ないんですけど(笑)、私にお金を使わせたくないんです。そういう思いを表現するのが難しいのかなあ? どうだろうな? と思います。 ――お母さんはやっぱり、どこまでも娘が心配な「お母さん」なんですね。 にしおか:おそらく、母も自分がたちゆかなくなってきているのを、わかっているのだと思うんです。その不安を押し込めてみたり、コントロールできずに怒りという感情になったり。そして、それごと全部忘れちゃったり。それも私の想像ですが、切ないなって。