【独占】大火災に見舞われた温泉旅館「地域を絶対的に守り抜く」逆境からの復活
一方、火災当時、「天城荘」の支配人を務めていた木村優希さんは、福原さんが経営するリゾート施設で下働きの日々を送っていた。「最初は悔しかった…すごく」。 福原さんは実力がある木村さんに、もう一度チャンスを与えようとしていた。
火災から10カ月が経った「天城荘」には、支配人に復帰した木村さんの姿が。この日は内装の打ち合わせだったが、客室はこれまでの純和風に加え、北欧風とバリ風もつくることに。火災前よりもっと素敵な宿へ…。支配人として、木村さんの勝負が再び始まった。
「天城荘」のリニューアルが進む中、福原さんは河津町の観光協会にある提案をする。それは桜からの脱却…セールスポイントの多様化について力説する。 「山があり、海があり、滝があり、もったいない」。 コロナ以前、河津町の年間の観光客数は約115万人。そのうち8割近くが「桜まつり」の時期に集中していた。桜の時期以外に観光客を呼べていない課題に対し、福原さんは、成長が見込める外国人旅行者への対応の強化を提案する。町を挙げて河津の魅力をアピールすることで、下田など近隣に流れている外国人旅行者をつかもうというのだ。 支配人の木村さんはそんな福原さんの思いを汲み、河津町のPRが期待できる秘策を打ち出すが、今度は工事中の「天城荘」に深刻な事態が発生し――。
人気の観光地「知床」で起きた悲劇…沈む町に光を灯せ!
北海道東部の斜里町。オホーツク海に突き出た知床半島の北側を占める町で、2005年7月、知床は世界自然遺産に登録された。独特の地形や環境が人を寄せ付けず、希少な動植物の営みを育む、世界に二つとない場所だ。 コロナ前には年間120万人以上が訪れていた人気の観光地だったが、2022年4月23日、知床半島沖で小型観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没。死者・行方不明者26人という惨事となった。現在、事故を起こした運航会社はもぬけの殻。遺族への損害賠償はまだ進んでいない。
去年8月、斜里町では観光船の今シーズンの運航が始まっていた。天候による運航判断を単独では決めないこと、陸上との連絡手段を常に3つ以上確保することなど、事業者たちは国の規定よりも厳しい自主ルールを課して運航。それでも去年の夏の利用客は、以前の約4割ほどだった。 観光客の数は徐々に回復してきているものの、事故の影響は大きい。