【大学野球】大敗で二部降格の駒大 香田監督は「上がるにふさわしいチームになって、上がりたい」
「野球を奪われたわけではない」
【東都一部二部入れ替え戦▽神宮】 ▼6月27日 3回戦 東農大2勝1敗 東農大(二部優勝)12-1駒大(一部6位) ※東農大は1993年秋以来の一部昇格 1勝1敗で迎えた一部二部入れ替え戦3回戦。勝ったほうが今秋、神宮球場で戦う権利を得る。駒大は1回戦で先勝(5対1)し、一部残留へ王手をかけたが、2回戦は惜敗(2対6)。二部優勝・東農大に逆王手をかけられた最終決戦は、予期せぬワンサイドとなった。 駒大は4回を終えて0対11と大量リードを奪われた。絶望的な流れではあったが、入れ替え戦は9イニングある。下を向くわけにはいかないが、難しい2時間28分だった。1対12。駒大は昨秋、東洋大との入れ替え戦を2勝1敗1分で一部復帰を果たしたが、1シーズンで二部降格。厳しい現実を目の当たりにした。今春から母校を指揮する香田誉士史監督は試合後、本音を口にしている。 「ゲーム自体、きつかったですね……。あきらめずにいきましたけど皆、苦しかっただろうな、というゲームになった。お互い我慢の展開でしたが、農大さんの勢いが上だった。受け入れるしかない。野球をやる権利を奪われたわけではないから。試練という道の中で、人生の中ではこういうこともある。僕もこういうゲームを何度も経験してきましたけど、途中から苦痛になるぐらい……。伝えたいことが何かある、というその点差なんだ、と。今までの私の経験の中でも、メッセージがあったと思うので。野球を奪われたわけではない。連盟から抹消されるならばあれですけど、その権利はあるわけだから、前向きにいくしかない。そっち(二部)に行っても厳しい戦いは変わらない。課題はゲームの中にもあり、何であるかを探求して、追求してやらないと、二部でも下のほうに行ってしまう。何から始めるかは、スタッフ、選手間でもミーティングをしながら、真っすぐ、正直にやっていくことかな、と思います」
チーム強化の「過程」としての手応え
駒大苫小牧高で2004年夏に北海道勢初の全国制覇へ導くと、05年夏は57年ぶり、史上6校目の連覇を達成した。06年夏は早実との決勝で延長15回引き分け再試合の末に準優勝。73年ぶりの夏3連覇を逃したとはいえ「北の名将」は絶大なインパクトを与えた。 同校監督退任後、08年から鶴見大コーチ、部長を経て、12年に西部ガスのコーチを6年務め、18年に監督就任した。都市対抗出場4回、社会人日本選手権出場4回。23年の社会人日本選手権を最後に退任した。 今年2月1日に駒大の監督就任。新天地で指揮してわずか2カ月で開幕し、約2カ月のリーグ戦に挑んだが、一部最下位。約1カ月の調整を経て一部二部入れ替え戦に臨むも、結果を残せなかった。香田監督は合宿所で学生と寝食をともにし、信頼関係を築いた。しかし、約5カ月の短期間では大変な仕事だった。 「(開幕の)4月に入り、初めて尽くしだった。社会人は一定の時間から全員で練習して、というスタイルで来ていました。2、3月は(学生たちはグラウンドに常時)いましたけれど、4月以降は学校との兼ね合いとかがあり、これは難しいな、と。どこもそうなんだろうなと思いながらも、体調をどう持っていくか、気持ちをどう維持していくか……。(リーグ戦の)勝ち負けによって、いろいろな部分をどうしたらいいか、引き出しの中でどう導いたらいいか。(社会人とは)難しい差はあったと思います。その中で(リーグ戦では)連勝もできたりして、いろいろ感じるものはあります」 二部降格の無念を味わったが、香田監督は「大事なものは、順調にやっているところでもある」と、チーム強化の「過程」としての手応えを得ている。野球を通じての人間形成。学生の育成に近道はない。地道な活動を経て土台が築かれ、力となっていくものだ。就任1シーズン目で東都の洗礼を浴びる形となったが、負けて得る財産もある。だからこそ、悲壮感はなかった。 「一部、二部も同じぐらいの選手層じゃないかと思いますし、日本一レベルの高いリーグだと思う。自分たちはもう一度、そこの足りない部分を思い知らされているわけですので、しっかりと蓄えて、また上がるべくして上がりたいなと思います。上がるにふさわしいチームになって、上がりたい」 駒大苫小牧高が北海道勢初の全国制覇を遂げてからちょうど20年。栄光を味わった香田監督であるが、さかのぼれば、挫折から這い上がってきた野球人生だ。2003年夏は倉敷工高(岡山)との1回戦を8対0でリードしながらも雨天ノーゲームで、仕切り直しとなった翌日の試合で敗退(2対5)した。香田監督は駒大苫小牧高を率いた01年夏、03年春を通じて、3大会連続初戦敗退。この悔しさを胸に翌年夏、たくましさを増した駒大苫小牧高は、深紅の大優勝旗を手にしている。 西部ガスでも創部9年目、都市対抗5回目の出場で、悲願の初勝利を挙げた。黒星を糧にしてきた指導者人生。香田監督は今春、駒大卒業以来、29年ぶりに母校のユニフォームを着た。このままで、終わるはずがない。じっくりと時間をかけて、チームを立て直す。教育者、勝負師としての情熱は高まっている。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール