「良い先生」像の呪縛、学校の「前例踏襲」風土…。働き方改革が進まない教員側の要因
近年働き方改革が叫ばれる中、教育現場では依然として改善が進まない状況が続いています。学校現場における教員の長時間労働の問題は、さまざまな要因が絡み合っていますが、その背景には、教員特有の価値観や学校の古い慣習も大きく影響していると考えられます。 【調査結果】教師がやる必要のない業務一覧 長時間労働の改善は、教員側の意識や考え方にも向き合わなければ、根本的な解決にはいたらないでしょう。
◆教員自身が抱く「良い先生」像の呪縛
教育現場には「良い先生」像に対する固定観念が根強く存在します。保護者の間でも、授業が分かりやすいなど以上に、“熱心な”教員を評価する傾向が顕著です。長時間働き、夜遅くまで児童生徒のために尽くす姿が「良い先生」の象徴とされているのです。 この価値観はさまざまな形で表れています。例えば、保護者からは「個々の児童生徒のために細やかに動いてくれる先生」「休日の部活動も率先して指導してくれる先生」「進路相談は夜遅くまで対応してくれる先生」といった期待が寄せられています。 これらに応えようとする教員の姿勢が、結果として長時間労働を助長する一因にもなっているのです。教員時代の筆者自身もまさにそうでした。当時は仕事と割り切るのではなく、児童生徒のために寝食忘れて働いてこそ教員だ!という価値観を持っていました。 この価値観は教員自身にも深く内面化されています。多くの教員が自ら進んで長時間労働を選択し、それを美徳として捉えているのです。授業力向上のために休日を使って研修に参加したり、より良い授業のために膨大な時間を準備に費やしたりする教員も少なくありません。 しかしこれらの活動の多くは「残業」としては認められず、教員の自主的な取り組みとして扱われています。そしてこのような献身的な姿勢が、結果として教員全体の働き方改革を遅らせる要因となっているという皮肉な現実があります。 もちろんまずは社会全体の価値観を「何でもしてくれるのが良い先生」だというものから、「子どもの成長や自立をゴールとする意識を持っているのが良い先生」だというものに変えていく必要があります。 そして教育現場に必要なのはマインドセットによる意識改革です。求められている「良い先生像」を目指して“他人軸”で生きていくのではなく、教員一人ひとりが自分軸を持ってやりたい教育を見つめ直し、本当に必要な業務は何かを考える必要があります。 そのためには各学校が教育のコンセプトを明確にし、それに沿わない業務は思い切って削減していく。そのような改革を進めることにより、教員が働きやすい環境ができて、結果として子どもたちの笑顔につながっていくのです。