「良い先生」像の呪縛、学校の「前例踏襲」風土…。働き方改革が進まない教員側の要因
◆前年踏襲の風土が根付く学校現場、新しい取り組みへの抵抗
学校現場は基本的に前年踏襲の風土が強く根付き、新しい取り組みを導入することに対して抵抗感が大きい方です。SNSやクラウドサービスなどの新しいツールを活用する教員は依然として少数派です。 「去年もこうやっていたから」「前任の先生もこの方法でやっていたから」という理由で、非効率でも従来の方法を踏襲する傾向が強く見られます。 また民間企業と異なり教育現場には「売上」という明確な数値が存在しないため、コスト意識が希薄になりがちです。具体的な数値目標がないことにより、業務の効率化やリソースの最適化といった観点が軽視されることが多く、現状維持を続ける傾向が強くなっています。 例えば、職員会議の資料作成においてデータの共有やペーパーレス化が進まず、大量の紙資料を印刷して配布する形式が続いている学校も多くあります。保護者への連絡方法も、一斉メール配信システムの導入が進まず、従来の印刷物配布に固執する例が見られます。このような保守的な姿勢が、業務効率化の大きな妨げとなっています。 特に管理職の立場にある教員は、自分たちが長年やってきたやり方が良いものだと考え、「今のやり方で特に問題はない」「変更によって新たな混乱が生じるかもしれない」という懸念から、改革に消極的な姿勢を示すケースが多く見られます。 しかし教育現場の持続可能性を考えると、少ない努力で最大限の成果を上げるための意識は必須であり、そのための仕組みづくりが求められています。若手教員の中には効率的な働き方を模索する動きも出てきており、それを管理職としてより後押しすることが必要です。 具体的にはICTツールの積極的な活用による業務効率化、会議時間の短縮、部活指導の外部委託、行事の精選などさまざまな取り組みが考えられます。これらの改革を進めるためには、管理職のリーダーシップと教員全体の意識改革が不可欠です。 筆者が運営しているコーチング塾の生徒であり現役教員の話によれば、ICTツール導入に関して学校に提案をしたところ現場は賛否が分かれたものの、管理職が後押ししてくれたことで導入ができたそうです。時代に合った情報を収集している若手教員の声を聴き、現場に取り入れることを推進する管理職がとても重要です。 筆者がコーチング塾を通じて関わる教員たちは、子どもたちの成長を心から願い、教育をもっと良くしたいという熱い思いを持っている人がとても多いです。そういった教員を生かすも殺すも管理職の関わり次第だということを、学校を改革できる立場にある方たちはしっかりと認識いただきたいと思います。
▼坂田 聖一郎プロフィール
教員を13年間経験した後、独立し「株式会社ドラゴン教育革命」を設立。「学校教育にコーチングとやさしさを」コンセプトに、子どもたちがイキイキと学べる教育を実現できる世の中を学校の外から作りたいという想いで活動する教育革命家。
坂田 聖一郎(子育て・教育ガイド)