新人王のダークホース? 救世主の期待がかかる「広島の右腕」は
常広は来季に新人王の資格を持っている。近年のセ・リーグの受賞者を見ると、23年は村上頌樹(阪神)がプロ3年目、昨年は船迫大雅(巨人)がプロ2年目で受賞している。大卒2年目で新人王を受賞し、球界を代表する強打者として活躍した選手もいる。今季限りで現役引退した元ヤクルトの青木宣親だ。早大からドラフト4位で入団した青木は新人の2004年に10試合出場のみで打率.200、0本塁打に終わったが、翌05年に開幕から中堅の定位置をつかんで大ブレークした。全144試合出場し、打率.344、3本塁打、28打点、29盗塁で新人王、首位打者を獲得。202安打で最多安打に輝いた。
球史に残る選手となった青木
野球評論家の伊原春樹氏は週刊ベースボールのコラムで、青木についてこう語っていた。 「2007年から10年まで巨人ヘッドコーチを務めたが、その4年間で対戦。青木は05年にシーズン202安打を放ち、まさに脂の乗り切っている時期だった。07年には打率.346、10年には209安打で打率.358をマークして首位打者を獲得。とにかく、打ち出の小槌のように安打が飛び出していた。身長175cmとそれほど大きくない体を小さくして構える。そして、体を揺らしながらタイミングを取る。どちらかというと、初球からは打ってこない。自分が狙っている球をじっくりと待ち、それを狙いすましてヒットゾーンへはじき返していく。さらに打撃が嫌らしくなるのは2ストライクに追い込まれてからだ。厳しいコースの球を打ちにいきながらファウルにする。そうやって粘っているうちに投手がコントロールミスした甘い球を、ものの見事にヒットにするのだ。それもコースによってセンター前、レフト前、ライト前と広角に打ち返していく。ミーティングでは投手に『絶対に根負けしないように』と話していたが、なかなかそれもうまくはいかなかった」 「同じヒットメーカーと言えばイチロー(元オリックスほか)もいたが、彼からはそんなに嫌らしさは感じなかった。どちらかというと、イチローはクールに、サラッとプレーするタイプ。青木からは泥臭さも感じられたため、嫌らしさがにじみ出ていたのだろう」 青木のプロ1年目を終えた時点では、球史に残る選手になることを想像し難かったが、天性の打撃センス、俊足に加えて努力で道を切り拓いた。常広も伸びしろが十分にある。大卒2年目の今季は新人王を獲得する活躍を期待したい。 写真=BBM
週刊ベースボール