問題は豊洲市場ではない。東京都議選・西多摩選挙区、奥多摩町の現実
かつての人口は1万5000人
駅の近くでうどん・そば店を夫婦で営む女性(77)は、「『ここが閉店したら食べるところがなくなる』と町民にせがまれて経営を続けています。本当は、高齢なのでもう店をたたみたいんですけどね」。聞くと息子2人は青梅市に移り住んだという。「この町は年寄りばかりで、若い人はほとんどいない。やっぱり仕事がないと、若い人は出ていっちゃいますね。議員の方には、若者が戻ってこれるような町にしてほしい」と寂しそうに話す。 町民の一人(79)は、昔を懐かしんだ。「3村が合併したころは賑やかだった。ダム建設工事で働いていた父に、子供のころに弁当を持っていったよ」。氷川町、古里村、小河内村の1町2村が合併して奥多摩町が誕生したのは1955(昭和30)年。当時、小河内ダムの工事に多くの人が関わっていたほか、林業も盛んだった。人口は1万5000人を超え、今はないパチンコ店も4軒はあったという。
人口減の町の声は都政に届くのか
町の人口動態によると、2016年は176人が亡くなり、168人が転入してきた。転入のほとんどは町内にある特別養護老人ホームの入居者だ。入居者が亡くなってベッドが空くと、その分が入居してくる。転出の110人はほとんどが若者だった。 夕食をとった居酒屋の女性店主が「生活費が安い、というのは町の魅力じゃない。やはり雇用を増やさなければ。地元の子が居付かないのに、どうして外部の子が居付くのよ」と少し怒っていたのを思い出した。 西多摩選挙区の面積は約469平方キロ・メートル。奥多摩町はそのうち約半分に相当する225.5平方キロ・メートルを占めるが、ある陣営は「人口が少ないせいもあり、選挙期間中、奥多摩町に行くのは1回くらい」と明かした。 (取材:具志堅浩二)